November 16, 2011

チョ(著)ッとだけよ

 昔、低俗番組と非難されたが、当時のお茶の間の話題を独占したテレビ番組がある。週末、土曜日の午後8時に放映されたテレビ番組『8時だよ!全員集合』だ。
 ドリフターズの数あるギャグの中で、妙に印象深いのが加藤茶さんの「ちょっとだけよ、あんたも好きねえ」だ。『タブー(Taboo)』の妖しげな曲に乗って、ピンク色のスポットライトを浴びて、『サザエさん』の波平さんのようなかつらをかぶり、黒メガネにちょび髭を付けた加藤茶が現れて、観客とテレビの前の視聴者に意味ありげに「ちょっとだけよ、あんたも好きね」と話しかける。別にセクシーでもなく、加藤茶さんの姿形と、ストリッパーのような仕草とギャグが極度のミスマッチを生み出して、笑いを引き出す。

 で、大衆演芸論をするのが目的でなく、「チョ、著作権」を取り上げたい。





 どちらも買って日が浅いので、読み切っていないが、興味深い。『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』はけして読みやすい内容ではないが、取り上げているトピックが印象深い。テレビコマーシャル(CM)に著作権があっただなんて、驚きである。
 著作権の改正へ向けての審議・話し合いが、こんなふうに行われていたとは、これも驚きである。
 ちなみに法改正へ向けての審議・話し合いは、現在、関係省庁のWebpageで閲覧できるし、そのときの配布資料も見ることができる。生々しい論戦の模様が伝わってくることがある。

 『文化のための追求権』は、前半と後半の2部構成になっていて、前半は著作権全般に関する解説で、後半は追求権についての解説になっている。美術の著作物と追求権という意外な側面が明らかにされて、これも驚きである。図書館職員というよりか、博物館・美術館のキュレーター向けの話だけれども、知的財産権に興味のある人には必読の書である。

 で、加藤茶さんのギャグをパクったって! う〜ん、たしかに、そうなんだよね。ギャグも著作物とみなされることがある。それも被害を受けた側が訴えた場合であって、多くの場合は著作権が無いとみなされる。というのも、ギャグの多くが日常会話の言葉が使用されていて、「創作性」が無い場合が多い。たとえば、小島よしおのギャグ「そんなの関係ない(ねえ)」も、日常会話によく用いられているので、もしこれに著作権があると、へたに会話できなくなる。「そんなの関係ない」と言うたびに、権利者である小島よしおに著作権料を支払わなければならない。だから、「ちょっとだけよ、あんたも好きね」も、部分的に日常会話で使うことが多いので、これには著作権が無いと考えられる。
 それから、ギャグは多くの人に知ってもらって価値のあるもので、権利者が独占して、誰も知らないのでは、意味も価値もない。小説のタイトルと同様に、著作権を主張することが難しい。物マネとして、ハイレグの競パン履いて、「そんなの関係ねえ!」と叫んで、営業活動すれば、小島よしおと所属事務所に訴えられる可能性がある。

 ここまで読んでくれた人へ
 「(著作権に触れたのは)ちょっとだけよ、あんたも好きねえ〜〜」
 「(著作権侵害だって?!)そんなの関係ない!」

00:01:05 | falcon | comments(0) | TrackBacks