June 23, 2010

デンマークは学校図書館の制度が世界一

 FIFAサッカーワールドカップの決勝ステージへ向けて、各チームの総力戦が繰り広げられている。

 フランスが敗退してしまったのは残念というほかない。
 フランスは幼稚園(保育学校)からリセ・職業リセ(普通科高校・職業高校)まで学校図書館が設置されている。幼稚園と小学校(5年制)の学校図書館はBCDと呼び、コレージュ(4年制中学校)とリセ(3年制)・職業リセ(3年生から5年制)の学校図書館はCDIと呼ぶ。いわゆる中等教育学校であるコレージュ・リセ・職業リセのCDIには、専任の教員としてドキュマンタリスト教員が配置されている。1989年から国家試験でドキュマンタリスト教員の資格試験を実施して、採用している。日本のような司書教諭を12学級以上に一斉配置するのではなく、国家試験に合格した者を順次配置している。採用のための国家試験が始まって、20年近く経っているが、すべての中等教育学校に配置されているわけではない。ドキュマンタリスト教員の養成はIUFMという教職大学院と国立遠隔教育センターで行っていて、IUFMでは2年間の養成課程があり、1年目は450時間から500時間の専門教育と教職課程の講義科目があり、2年目は36週(9ヶ月だから、ヴァカンスを含めれば、ほぼ1年に間相当する)、週12時間を上限とする教育実習がある。日本の教育実習と比べ物にならないし、日本の司書教諭の養成と比較するのもおこがましい。

 デンマークはヨーロッパのみならず世界的に見ても、学校図書館の制度が整っている。
 ほとんどの国民学校の学校図書館に、司書教諭が複数配置されて、学校図書館担当の事務職員も配置されている。その司書教諭たちが授業時間を軽減されて、学校図書館に関わる仕事をする。そのため、学校図書館には司書教諭か、事務職員が常駐する。
 デンマークの学校図書館が恵まれているのは、資料教材支援センターが充実していることだ。学校図書館から連絡があれば、配送車がセンターから届けてくれる。学校図書館のための資料に限らず、体育の時間に必要な野球の道具も届けてくる。

 実はポルトガルも1996年から政府が「学校図書館ネットワーク計画」を実施して、申請した学校へ予算措置を行い、学校図書館の充実を図っている。政府から支給された資金は、資料だけでなく、学校図書館の備品、設備に使ってもよいことになっている。
 学校図書館の職員は、授業をしながらの兼任司書教諭が多く、主に校長などの管理職経験者で退職した者を学校図書館の専任職員として配置していることも多い。

 ほかにスペイン、イタリアでも学校図書館の充実をめざした読書活動などが推進されている。

 ドイツは連邦制を取っているので、地方ので格差が大きい。
 教育予算が縮小している地方では学校図書館がほとんど機能せず、地域の公立図書館や大学図書館が支援して、読書・学習活動を進めているところもある。

 なにかと話題になるフィンランドは、OECDのPISAでは学力トップクラスであるが、学校図書館の設備、制度、資料の充実度は、ヨーロッパの中でも低レベルといってよい。
 北欧4国の中ではデンマークの学校図書館の制度がトップで、スウェーデン、ノルウェーが次席で、フィンランドは最も低い。

 学校図書館の制度を見習うとすれば、デンマークとフランスである。
 意外と、アメリカ、イギリスは学校図書館が充実していない学校が多い。

 「ええー、日本から行った視察団の報告書や研究者のレポートでは、アメリカ・イギリスの優れた学校図書館の様子が描かれていますが」

 それは英語圏へ行くのが日本の研究者の性(さが)です。日本の学問の世界は、いまだにアメリカの占領下ですから。それに外国まで行って、わざわざ学校図書館が充実していない普通以下の学校に行かないでしょう。レポートには良いところしか描かれていませんよ。塩野七生さんが書いていますが、カエサルの言葉として、「普通の人間は自分が見たい現実しか見ていない」ということです。

23:13:04 | falcon | comments(0) | TrackBacks