February 23, 2010

『カティンの森』

 実は体力測定を終えて、神保町の岩波ホールでアンジェイ・ワイダ監督『カティンの森』を鑑賞した。

 第2次世界大戦中、多くのポーランド将校が行方不明になり、ソ連領内のスモレンスク郊外のグニェズドヴォで銃殺されたことが明るみになった事件である。戦中には、ナチス・ドイツによってソ連の犯行と告発されたが、ドイツが敗戦国になると、ソ連はナチス・ドイツの犯行とされて、冷戦下、東側陣営となったポーランドでは真相を追求できなかった。冷戦後、ロシアの秘密警察による犯行だったことが表明された。

 映画は引き裂かれたポーランド将校の家族を中心に、おぞましい事件の真相が暴かれてゆく。

 残された将校の家族が暮らすポーランドの古都クラクフの情景が哀愁が漂い、悲しいほどに美しい。

 最後の場面は生々しく凄絶で正視できないほどだ。

 戦争を描いたわけではないが、第2次世界大戦の複雑な政治状況の中で起こった悲劇である。

 日本の高等学校で学ぶ西洋史におけるポーランドは影が薄い。しかし、ポーランドは中世から近世にかけて大国であった。残念なことにヨーロッパ諸国によって分割されて、歴史に翻弄され、衰微してゆく。

 岩波ホールでの上映が終わったけれども、各地で上映される予定なので、お勧めする。

23:09:52 | falcon | comments(0) | TrackBacks