December 05, 2010

著作権戦争!

 今、知的財産権(知的所有権、無体財産権)が大変な問題になっている。



 『<反>知的独占』は非常に刺激的な著作である。知的財産権である特許権、意匠権、商標権、著作権などを長く保護していると、新たな創作活動を阻害して、経済を停滞させて、生活を豊かにできなくなると指摘している。
 特許権など一部の知的財産権は保護期間が短く、保護期間を過ぎれば、多くの企業が参入して技術を共有できる。しかも、登録制を取っているので管理しやすい。それでも微妙な違いで、特許権を巡って裁判が起きることもある。
 問題は、著作権である。日本の著作権法では、保護期間が映画の著作物は公表後70年になったが、その他の著作物は著作者の死後50年、あるいは公表後50年である。欧米では70年から95年と比較的長く保護される。
 これに対して、アメリカでは著作権の保護期間の延長に対して激しく反対する動きがある。
 文化的な所産はある一定期間を過ぎるとパブリック・ドメイン、つまり多くの人が共有できるように求めている。

 日本では著作権を著作物を大切に思うとか、著者を尊敬するという精神論、倫理観と結び付けて語られることが多い。しかしながら、著作権は権利であり、著作者の財産権を、著作を売ることで得られる収入を確保する権利を保護する。日本では財産権と言う意識が非常に低いので、保護期間の延長に反対と言っても、ほとんど理解が得られないだろう。
 また著作権侵害と言うと、犯罪であり、精神論・倫理観と思い込んでいる人にショックを与えることになる。著作権問題をますますわかりにくくさせている。

 著作物、正確にはその複製品(コピー)を販売したり、利用させたりして、得られる収入を著作者に還元することは重要なことであるが、新たな創作を阻むことになると、長期的には経済活動を停滞することになる。
 実に難しいパラドクスである。



 野口祐子著『デジタル時代の著作権』は、こうした問題点を明快に解説している好著である。図書館と著作権については、ほとんど叙述が無いが大変参考になる。

 こうした著作群の根拠となるのが、レッシグ教授の著作である。



 これから読もうと思って買ってある。

 著作者の権利を守ることは大切であるが、経済的価値のある著作物とそれ以外の著作物の線引きをして、登録制を用いたほうが望ましいのかもしれない。何でもかんでも著作権というわけにいかないだろう。

01:50:33 | falcon | comments(0) | TrackBacks