December 13, 2010

赤色巨星のような日本の大学行政

 オリオン座が美しく見える季節になりました。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスが描きだす冬の大三角形は、いつ見ても雄大な気分にさせてくれます。オリオン座は三ツ星、オリオン座の大星雲、星座の足に輝くリゲルなど見どころの多い星座で、冬の帰り道、天を眺めて、いろいろと物事を考えながら、家路を急いでいます。そうそう、すこし目を天上に移すとおうし座のアルデバランや、昴、つまりプレアデス星団が見えてきます。Falconは近視と乱視がひどいのでメガネをかけています。そのため直視すると昴は白いもやもやとしか見えません。そこで、高校時代、天文部に属している友人に教えてもらったのですが、昴のある位置がわかったら、目を少しそらして、横目で見るようにします。すると、星がいくつかわかれて見えるようになります。横目で見ると、まっすぐ見るよりも、眼のレンズが薄くなり、遠くのものがはっきり見えるようになるのです。夜、星を見るとき、「にらみ」は止めましょう。

 言いたいことは、そこじゃなくて、オリオン座のベテルギウスもおうし座のアルデバランも、赤く見える赤色巨星です。核融合の材料となる水素が減って、ヘリウムの核融合が起こり、さらに重い元素がつくられて、中心核に集まり、外周部は膨張を始めます。しかも、外周部は水素の核融合が起こりにくいので、温度が低く、赤く見える。核融合と重力のバランスが崩れて、やがては爆発して、ブラックホールなどに姿を変える星です。

 日本の大学行政は、まるで赤色巨星みたいだなあと思います。核融合を起こす水素が減っている、つまり受験生が減っているのに、規制緩和のおかげで、どんどん大学が新設されて、さらには学部・学科が増設されています。それだけでは飽き足らなく、大学院が雨後の筍のように現れています。核融合と重力のバランスが崩れて、爆発寸前です。
 常識から考えれば、受験生が減っているのだから、大学を増やす必要は全くありません。ところが第二次ベビーブームの世代が大学生になったころに、雇い入れた大学教員が生首を切られずに居座っていて、その教員の給与を確保するため、学生の数を増やします。学生数が増えると、それに見合った教員数にするため、教員を増やします。教員数が増えると、学部・学科の分裂がおこり、大学の規模が大きくなります。大学は規模を維持するために、受験の機会を多くして、受験生の確保に努めます。入学してくる学生の質が下がり、授業のレベルの維持のため、必要以上の手間がかかる、場合によっては教員が学生一人一人の習得する講義の選択までして、時間割を作ってあげることもあります。学生の中には、肉体的・精神的な疾患を持っている子もいる。不自由を感じる学生を排除しようと言っているのではありません。実質的に講義の内容を理解できない学生までも、憐憫の情をひた隠しにしつつ、抱えこんで、雑務をこなさなければ、大学の教員は務まりません。それで研究をしろというのだから、異常事態です。いつ爆発しても、おかしくない状態なのです。

 ベテルギウス、アルデバランを見ていると、危うい身の上を考えてしまいます。ベテルギウスは地球から640光年離れています。アルデバランは意外と近くて65光年、プレアデス星団は400光年です。今見ているベテルギウスは640年前の姿です。
 宇宙のことを思い、気を紛らわして、生きてゆくしかありません。

01:07:51 | falcon | comments(0) | TrackBacks