July 02, 2009

フジツボ=藤壺?!

 感性のツボにハマりまくり。

 またまた岩波書店の驚異の編集者・塩田春香さんプロデュースの倉谷うらら著『フジツボ:魅惑の足まねき』(岩波科学ライブラリー;159)が刊行された。
 『クマムシ』『ハダカデバネズミ』に続く《生きもの》シリーズだ(ただし、『クマムシ』はシリーズになっていなのだが)。

 海へ行けば、ごく普通に見られるフジツボだが、何気ない姿から想像のつかない不思議な驚異の世界がひろがる。
 まず、フジツボは貝じゃない。節足動物の甲殻類エビやカニの仲間だ。
 幼生から成虫へ脱皮する様子は神秘そのもの。

 ところでフジツボを漢字で書くと、なんと「藤壺」。「富士壺」という当て字は鎌倉時代以降で、それ以前は「藤壺」だったらしい。中国語でも「藤壺」と書くようだ。
 何故「藤壺」と書くのかというと、藤壺は餌をとるために蔓脚を円錐形の「噴火口」のようなところから、海水中に出しているのだけれども、その蔓脚が植物の藤に見えるかららしい。そして壺があるので、「藤壺」になる。
 著者の倉谷さんは指摘していないが、蔓脚を扇に見立てて、円錐形の部分を十二単を着た平安時代の女性に見立ててみれば、「源氏物語」の藤壺女御と思えなくない。しかしながら、紫式部はおそらく海のフジツボは意識していなかったと思う。知らなかったわけではないが、目に映っても、意識に上らなかっただろう。

 フジツボから源氏物語の藤壺女御へ、なんというロマン。
 興味が尽きない。

23:20:08 | falcon | comments(0) | TrackBacks