July 18, 2009

甲骨のブルース:えーっ、あの文字が!

 2000年に亡くなった青江三奈さんのメジャー・デビュー曲『恍惚のブルース』のサビの部分はなかなか良いですね。

 「ねえ、Falconさんって、年齢いくつなの?随分と古い歌謡曲を知っているじゃない」

 生まれは昭和二桁ですけど。

 そんなことは、どうでもいいです。



 落合淳思著『甲骨文字を読む』(講談社学術文庫;1905)を読んでいました。
 最近は携帯電話でメールを打ったり、パソコンで文書を作成したりするので、紙に漢字を書くのが億劫になり、いざ手紙を書こうとすると字が思い浮かばないで、おぼろげな記憶を嘆くことになります。
 この本は甲骨文字のクイズを楽しみながら、その魅力に迫ります。漢字のルーツがつぎつぎと明らかにされて、ひたすら驚くばかりです。中学生や高校生でも楽しみながら、読み進めることができます。漢文の知識があれば、興味は倍増しますが、全く無くても著者の先生が丁寧に説明しているので、安心して読めます。

 ところで、古代中国では亀の甲羅や動物の骨を焼いて占い、その結果を甲羅や骨に記したので、甲骨文字と呼ばれています。
 Falconは、子供のころ、学校で甲骨文字を教わった時、亀の背中の甲羅に書いていたと思い込んでいました。あんなに堅くて、丸い甲羅によく書けたなあと思っていました。
 ところが、十数年前に台湾の故宮博物院に行った時、亀の腹の甲羅に書き記した展示を観て、考えを改めました。台湾の故宮博物院は今ではすっかり改装していますので、甲骨文字の展示は見かけなくなりましたけど、昔は入り口近くに甲骨文字の展示コーナーがありました。甲骨文字は亀の腹甲に書かれていました。腹甲なら、平らで、柔らかく、文字を刻みやすかったと思います。
 この本でわかったことは、古代中国では動物の骨はほとんど牛の肩甲骨を使っていたです。日本でも骨を焼いてヒビを見て、占う神事はあちこちに残っていますが、日本では主に鹿の肩甲骨を用います。牛は農耕に使う貴重な動物だったので、うかつに殺せなかったと思います。

 この本で衝撃の事実が明らかになりました。
 図書館関係者の間では、「図書館」の略字として、くにがまえの中にカタカナのトを入れた文字を用いています。つまり「国」なかの「玉」を取り除いて、カタカナのトを入れた字です。環境依存文字ですので、このブログでは紹介できませんが、そんなに難しい字でないので、わかっていただけると思います。
 この文字は甲骨文字として、実際にあった文字だったのです。くにがまえが骨を表現していて、トはひび割れを表しています。てっきり、図書館の世界の隠語と思っていました。大学の講義では黒板に書くときは「図書館」を使い、この略字を用いたことはありません。
 使わなくてよかったと思っています。この略字の意味は、「とが」、つまり「凶事」を表す言葉でした。
 ときどきメモで使うときがありますが、古代中国のことに詳しい人が見れば、奇妙に見えたと思います。何しろ、凶事ですからね。

 というわけで、後は甲骨文字の奥深さにうっとりとして読み痴れました。

01:02:03 | falcon | comments(0) | TrackBacks