March 12, 2009

読んだとウソつく人たち

 国立国会図書館のサイトに「カレントアウェアネス」がある。二つ折りの雑誌スタイルで刊行されていたものがウェブ上で見ることができる。
 思わず笑ってしまったのが、イギリスで行われた調査で「読んだとウソをついた成人が65パーセント」という記事だ。
 2009年3月5日、イギリスとアイルランドではWorld Book Dayという記念日を設定している。
 4月23日は日本でも知られてるサン・ジョルディの日で、ユネスコはこの日を「世界図書・著作権の日」としている。その由来はシェイクスピアとセルバンテスの命日とも言われているが、日本では「子ども読書の日」でもある。イギリスとアイルランドでは4月23日に先んじて設けた日であるようだ。
 この日にイギリスの有力紙ガーディアンで、この調査が発表された。World Book Dayのウェブで1342人が答えた結果だそうで、読んだとウソをついた作品の第1位がジョージ・オーウェル著『1984』、第2位がトルストイ著『戦争と平和』、第3位がジョイス著『ユリシーズ』、第4位が何と『聖書』なのだ。
 たしかにイギリスはローマ・カトリックに国王が離婚問題で楯突いて英国国教会を設立させた国だから、国民が聖書を読んでいないのに読んだとウソをつくのもわかる気もするが、カトリックの国アイルランドで聖書を読んだとウソつくのも理解しかねる。
 ガーディアンの記事によれば、読書はある意味、はったりをきかせたり、見栄をはるのに、丁度いいらしい。つまり、相手に知的に見られたいと考えて、読んだふりをする。

 Falconは、あまり読書はしていないと公言している。あの本読んだ!この本読んだ!と自慢している連中を見ていると、「へぇー」と感心しながら、話の輪から遠ざかる。どこまで深く読んだか、自分でも認識できないのに、読書したことを自慢するのは見っとも無いと思っているからだ。
 
 えっ、よくも読んでいないのに、批判したこともあるだろうって!(本当は細かく読み込んでいたのだけれども)

 まあまあ、完膚無からしめるまで批判しても、仕方がない時もある。相手に弱みを見せておくのも、喧嘩の極意だ。どうせ、ウソで固めたフィクションなんだし。

 話が横道に逸れた。

 日本でも、「読んだとウソをつきましたか」という調査をしてみたら、どうだろう。
 よく話題になる「子どもの読書離れ」だが、実はあの調査のカラクリには問題がある。「5月の1ヶ月間に本を何冊読みましたか」と問い、1冊も読まなかった子どもを不読者として数えている。「小学校の子どもたちが何冊も読んでいるのに、中学生や高校生たちが1冊も読んでいない」という結果になるのも無理のない話で、小学生は字数の少ない児童書や絵本を読んでカウントするが、中学生や高校生は字数の多い小説を読むから、1ヶ月じゃ読み切れない。ある大学生が小学生、中学生、高校生にアンケート調査を行い、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に何冊本を読んだかを尋ねた。短期間に行った調査だが、中学生と高校生は1ヶ月ではほとんど本を読んでいないが、3ヶ月、6ヶ月と期間を延ばすとかなり本を読んでいることがわかった。ということは、「子どもの読書離れ」は深刻ではない。さらにいえば、「子どもの読書離れ」は一種の主義・主張を信奉する人たちが掲げた幻想、もっと端的にいえば、ウソなのかもしれない。要はあまり実証的ではない結果に踊らされているだけなのだ。
 昨年、『読んでいない本について堂々と語る方法』(ピエール・バイヤール著;大浦康介訳.筑摩書房)という、すごいタイトルの本が刊行された。タイトルこそ、すごいが、中身は至って学術的だ。というわけで、実は、今紹介した本を全部読みきってはいない。
 明日までに返さなければならない本があるから、読書に戻る。じゃあね。

01:13:01 | falcon | comments(0) | TrackBacks