March 10, 2009

アメリカの学校図書館にはLMSはいなくなったのでしょうか?

 実は先週末、筑波へ行っていました。
 筑波大学春日キャンパスで開催された「アジア・太平洋図書館・情報教育国際会議A-LIEP2009」に参加していました。
 「国際会議」と題されているので、厳めしい会議かと思ったら、和気あいあいとして楽しいミーティングでした。一口にアジアと言っても、中東地域やインド・スリランカからの参加者もしましたし、アフリカのナイジェリアからの参加者もいました。オセアニア地域、北アメリカからの参加者もいました。

 さて、初日、ハワイ大学のViolet H. Harada教授の講演がありました。初等・中等教育学校の教師と(学校の)図書館職員の協力を確立させるための実践教育に関する発表でした。
 たしか、Falconの記憶では、アメリカの学校図書館には教員資格を持ち、さらに大学院レベルの図書館情報学教育を受けたLMS(ライブラリー・メディア・スペシャリスト、またはメディア・スペシャリスト)と、ほかに技術スタッフ、事務職員が配置されていると聞いていました。Harada先生は講演でSchool librarianとおっしゃっていたので、LMSではないのでしょう。
 アメリカ合衆国は広大な国ですから、地域によって、学校教育の制度も実態も大きく異なります。50州の連合体みたいなものです。州の中でも、学校図書館の実態は大幅に異なるそうです。公立、私立、チャーター・スクールでも、実態は異なり、公立でも財政の豊かな自治体と貧乏な自治体でも格差があり、鉄道の線路を隔てて数百メートル離れた2つの学校でも、自治体が異なれば設備の面で天と地の違いがあるようです。Falconは以前、アラバマ州の学校図書館を見学しましたが、財政豊かな私立の高校と、設備の整った図書館活動の盛んな公立高校を見学しました。そのとき、カリフォルニア州からやってきたLMSの先生が、「サンフランシスコでも、郊外へ行けば、蔵書が少なく、図書館担当の教員もいない学校があるのよ」と嘆いていました。
 日本の研究者などが訪れる学校は、大抵、トップクラスの学校なんですね。アメリカは「これが同じ国か?!」と思うくらい格差のある国です。

 世界は広いですから、他にも専任の学校図書館の教員を配置している国はあると思いますが、Falconが知っている限りではフランスだけです。ただし、フランスでも中等教育学校のコレージュ(4年制中学校)とリセ(3年制高校)、職業リセ、農業リセにいるドキュマンタリスト教員が学校図書館の専任教員(教科の授業は基本的に担当しない)であり、幼稚園と小学校にはいません。
 ほかに学校図書館活動の盛んな国としてはデンマークです。でも、授業時間の軽減を受けた司書教諭が2名から3名配置されています。
 同じ北欧でもスウェーデンとノルウェーは地域の教育委員会から派遣される図書館職員(正規の公務員)が学校図書館を担当するケースが多く、イギリスのSchool Librarianと非常によく似ています。
 イギリス連邦のカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、だった香港は、授業を持ちながらのTeacher Librarianで、日本とは待遇面で異なりますが、司書教諭と言えるでしょう。近年急速に学校図書館政策に力を入れているポルトガルも、Teacher librarianです。

 というわけで、日本の司書教諭は海外の人に理解しやすいのですが、学校司書を説明すると奇妙に思われてしまい、「学校司書には、さまざまな雇用状況があるんだ」と説明すると、ますます混乱をきたします。そのうえ、「学校図書館法という法律上で定められた司書教諭よりも、一部の学校司書が熱心に頑張っています」と説明すると、「日本は法律をないがしろにする国なのか?」と突っ込まれてしまい、最後には「日本はミステリアスで、エニグマティックな国だね」と微笑まれてしまうのです。

 でもアメリカも、その点では、州ごと、地域ごとに学校図書館の状況が違うので、日本以上にミステリアスかもしれません。

00:45:53 | falcon | comments(0) | TrackBacks