October 20, 2009

社会系志向・理系嗜好・文系思考の読書



 今、三中信宏著『分類思考の世界:なぜヒトは万物を「種」に分けるのか』(講談社現代新書2014)を読んでいる。卑近と言っては著者に失礼かもしれないけど、モーニング娘。の例などをあげて解説しているので、一見すると、いや、一読すると、わかりやすそうな説明かなあと思ってしまうが、実は生物学と哲学を巻き込んで、「種」に分けたがる人間の本性に挑んでいる相当難解な著作である。前著に『系統樹思考の世界』(講談社現代新書)があり、こちらは後で読もうと思っている。分類という言葉にひかれて読み始めたけど、かなり難解な理論が示されていて、読み応えがある。



 『分類思考の世界』では、ジェラール・ステア,ウィリー・グラサウア著;河野万里子訳『カモノハシくんはどこ?:生きものの分類学入門』(福音館書店)という絵本が紹介されている。面白そうなので、早速、都内の書店を探した。2002年に出版された本なので、なかなか見つからなかったが、渋谷の児童書専門店で見つけた。カモノハシはオーストラリアの池や沼地に住む哺乳類で、カモのような嘴があり、しかも卵を産んで繁殖するにもかかわらず、子を育てるときにお乳が出るので、哺乳類に属する。今のところ、ハリモグラとカモノハシが卵を産む哺乳類の一種、単孔類である。ストーリは、動物学校で哺乳類にも鳥類にも見放されて、仲間外れになってしまうカモノハシの健気な姿を描いている。イソップ童話の蝙蝠の話に似ているけれども、一応ハッピーエンドになる。絵本なので、絵がかわいらしい(カモノハシをかわいいと思うかは別問題だけれども)



 数学を専門とする韓国の大学の先生が書いた金容雲(キム・ヨウウン)著『日本語の正体:倭の大王は百済語で話す』(三五館)も読んだ。専門書ではなく、読み物として書かれているので、もうちょっと詳しい説明がほしいなあ、古代から現代までの百済語・新羅語・高句麗語・朝鮮語・韓国語・日本語の音韻の変化の規則を体系的に解説してもらえると、理解が深まったと思う。これまでも万葉集や記紀をハングル・韓国語で読むという試みはされてきた。たとえば藤村由加(4人著者の名前を合成したもの)著『人麻呂の暗号』(新潮文庫)が代表的な例である。しかしながら、これらの著作は突飛すぎる印象があった。一方、金容雲氏の著作は、古代朝鮮の言葉を整理して、しかも日本語に堪能な金氏によって、日本語が古代百済語に由来するという仮説に沿って、論を展開していることが実証的と思える。
 極めて残念な点は誤植があった。「板東」は板東英二の板東でなく、坂東玉三郎の「坂東」であろう。言語に関す本だけに、文字通りイタい間違い。それから渡部昇一氏の名前を見ると、Falconはげんなりする。渡部氏の見識の高さを認めたいが、背景となっている主張の何とも言えない強烈さに辟易してしまう。
 というわけで、社会系と理系に拘りながら、文系思考で読書を続けている。

18:00:13 | falcon | comments(0) | TrackBacks