October 18, 2009

リド島で『ヴェニスに死す』

 ラヴェンナを発って、ヴェネツィアへ向かいました。
 ヴェネツィアは、映画祭直前で、一週間後にはヴェネツィアが一年で一番盛り上がるレガッタが行われるので、本島および周辺で宿が取れないと考え、ヴェネツィア・サンタルツィア駅の一つ手前のヴェネツィア・メストレ駅で降りて、ホテルを探しました。駅のホテルの案内所で探してもらおうと思ったのですが、中国人の女の子があれこれ注文を言って受付の人を手こずらせていたので、自分で探すことにしました。
 メストレに結構安いホテルはありますが、エアコンなし、朝食なし、トイレ共同など条件としてはあまりよくありません。あれこれ迷った挙句に、エアコンなしでトイレ・シャワー共同、朝食ありの部屋に決めました。このホテル、入口や受付は結構立派なんですけど。
 パリやロンドンに初めて行ったころ、流れ星ホテル(つまり星なし)、shabbyなB&Bによく泊っていました。だから、トイレ・シャワー共同くらいは慣れています。エアコンの代わりに小さな扇風機が置いてあったのには苦笑してしまいました。

 ホテルのすぐそばのバス停からヴェネツィア行きのバスが発着しています。もう日が沈む寸前でしたが、翌日の下見で、本島までバスで行きました。

 ローマ広場にバスは到着します。降りてから、しばらく歩くと関西弁があちこちから聞こえてきます。日本人の観光客がたくさんいました。まるで日本の中にある「ヴェネツィア」というテーマパークに来たようです。
 とりあえずサンマルコ広場まで歩きました。まるで迷路のようです。一応、あちこちに矢印があるので、なんとかたどり着きます。途中、ティツィアーノの『被昇天の聖母』があるサンタ・マリア・グロリオーサ・ディ・フェラーリ教会に立ち寄りました。初めは気がつきませんでしたが、ティツィアーノの彫像の正面に、二人の黒い巨人の彫像があります。ギョロッとした目で見降ろしています。その二つの像に挟まれて、骸骨のような死者のリアルな黒い像があり、それらの対比に思わず、微笑んでしまいました。

 翌日は晴天でしたので、本島へ向かい、ヴァポレット(水上バス)でリド島まで行きました。ここは名匠ルキノ・ヴィスコンテイ監督の『ヴェニスに死す』の舞台だったところです。もちろん原作はドイツ文学を代表するトーマス・マン。昔、『ヴェニスに死す』を映画で観て、原作を読みました。うっかりすると美少年を追いかけまわす初老の男の話のように思えますが、美と芸術の物語です。ヴァポレットを降りて、船着き場からまっすぐ伸びる道を行くと、10分くらいで砂浜に到着します。もう夏の終わりの時期でしたから、海水浴客はまばらでした。この日は水着を忘れたので、砂浜でボーっとしていました。映画の雰囲気を少し味わってみました。

 リド島からヴァポレットに乗ってサンマルコ広場に到着し、ドゥカーレ宮殿などを見学しました。国立マルチャーナ図書館の入口は、レストランやカフェのテラスの間にありますので、ウェイターさんに入口を案内してもらいました。残念なことに中まで入りませんでしたが、入口で様子を見ることができました。

 ヴェネツィアで最後に立ち寄ったのはアカデミア美術館です。ここではジョルジョーネの『嵐(ラ・テンペスタ)』を見ました。大きな絵画ではありませんが、亡くなられた若桑みどり先生の『絵画を読む』などで紹介されていた謎の名画です。若い男と赤ん坊を抱いた胸がはだけている女が田園風景の中に描かれ、背景に稲妻が光っています。観たかった絵の一つです。

02:02:04 | falcon | comments(0) | TrackBacks