September 01, 2008

戦争が引き起こす貧困と悲しみ

 これも図書館で借りてきた本です。
 昨年、大きな話題になった、石井光太著『神の棄てた裸体:イスラームの夜を歩く』です。



 イスラームと題されていますが、ムスリム(イスラームの信徒)が住むアジアの地域を訪ね歩いて、社会の底辺に生きる娼婦や男娼の姿を描くルポルタージュです。
 読んでいると辛い、切ない。ほとんどが戦争や紛争、押し寄せるグローバル化による資源と労働力の搾取、格差によって、性を売り物にして生きてゆかなければならない人たちの心情がつづられています。短編小説のように、アジアに生きる人たちの生活の一こまが綴られていて、章節の最後に作者の感傷と幽かな希望のようなものが描かれて、後味は悪くはありません。でも、それだけに現実はもっと救いようのない状況だろうなあと推察されます。作者はそこまで描かなくとも、きちんと伝えています。もちろん、甘えることなく、同情を受けることなく、たくましく生き抜く人たちもいます。 やはり戦争は人々を傷つけます。戦うことは勇敢で素晴らしい行為ではありません。いかなる理由であろうとも、武器で人を殺すことは、殺人です。戦争を引き起こした為政者を、憎しみを持って『殺人者』と呼び続けるでしょう。戦争は多くの人を巻き込み、人生を狂わせます。人間としての誇りを失わせる結果になることを、誰も賛美はできません。

 さて、以前にも書いたと思いますが、世界には徴兵制を行っている国があります。たとえば韓国がそうです。
 フランスも数年前まで徴兵制がありました。徴兵を逃れるために、フランスの若者は海外へ留学したり、ボランティア活動をしたりしていました。中には、同性愛者のふりをした若者もいました。軍隊では同性愛者は忌避されます。こぐれひでこさんの本にも、軍役が嫌で、ゲイになった若者の話が載っています。
 もし徴兵制がしかれて、Falconは軍隊生活とオカマのふりの2つの選択肢なら、オカマのふりを選ぶでしょう。たとえ敵対する国が攻めてきても応戦することは、人殺しに加担することです。

 ベトナム戦争を行ったアメリカ人が反省して、反戦映画を制作すると、「アメリカは素晴らしい映画を作った」と褒めたたえる評論家がいますが、アメリカをいつまでも英雄視する間違った姿勢です。その結果、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争と際限もない戦争を引き起こしているのです。アメリカの映画人が反戦映画を作り続けても、国民全体の反省になっていない。経済が行き詰まると、ありもしない国際問題(イラクの核開発問題など)をでっちあげて仮想敵国をつくるアメリカの為政者の姿勢をしっかりと糺さないと、民間人を巻き込む戦争は無くなりません。
 戦争に反対する意見を表明して、それを訴えてゆくことが真の民主主義でしょう。(ちなみに、ここで述べている戦争は一般論としての戦争です。非現実の戦争についてではありません)

12:01:35 | falcon | comments(0) | TrackBacks