July 04, 2008

変化(へんげ)

 先日、不思議な夢を見た。

 夜、家に帰りつくと、テレビのスイッチを入れた。
 某国の要人が病に倒れて、輸血を必要とするというニュースをキャスターが読み上げていた。その血液型が稀な血液型で、世界中に数人しかしないらしい。
 すると、電話が鳴った。
 「血液センターです。……さんですね」
 「はい、何か」
 「あなたの血液が必要です。これから、直ちに所員が向かいます。ご協力ください」
 「それは、今、流れているニュースと……」
 「詳しく説明している時間はありません」
 電話が切れると、チャイムが鳴った。
 「血液センターの者です」
 玄関の扉を開けると、白衣を着た所員が3名ほどいた。
 「車で参りました。よろしく御同行ください」
 言葉は親しげだが、緊急を要しているため、2人の所員は腕を掴んで早くも連れ出そうとしていた。
 「あの、カギをかけたいのですが」
 無視された。車に押し込まれた。2時間くらい走っただろうか、車は奥多摩の山道を駆け抜けた。砂利道を登ったところで、血液センターについた。車から降ろされると、処置室に連れ込まれた。
 上着を脱がされて、上半身を裸にされて、診察台に寝かされた。
 「これから筋肉弛緩剤を注射します」
 「ええ、血を採るのに、筋肉弛緩剤は必要ないでしょう!」
 「落ち着いてください。興奮すると、アドレナリンが放出されて、血液に影響が出ます。弛緩剤は、抜き取るのに時間がかかるからです」
 「ちょっと待ってください。抜き取るとは、すべて血液を奪われるのですか」
 「血液型が適合した、あなたの血液が必要なのです。彼が助からなければ、世界の秩序が乱れます。世界の平和のために、あなたの血液が必要です」
 「殺されるのですか」
 「世界平和のために、あなたの血が必要なのです」
 診察台から起き上がると、全速力で処置室から飛び出した。
 「早く、捕まえなさい!」叫び声がして、所員たちの足音が廊下に響く。
 幸い、血液センターを出ると、明かりもない山道で、闇にまぎれて逃げることができた。かすかな月明かりで道標に書かれた「棒ノ折山」が読めた。棒ノ折山から秩父へ抜けよう。この道は中学時代、友人と歩いた記憶がある。鎌倉時代の武将・畠山重忠がたどった道だ。追手は別の道を行ったようだ。秩父へ向かう途中、記憶を失った。
 気がついたときには、小学校時代、家族と住んでいた団地の部屋にいた。暗い中で、両親の声がした。どこかでバタバタと羽音がした。灯りをつけると、ダイニングキッチンにおかれた鳥かごで、かわいがっていた十姉妹が子猫に首をかじられていた。
 慌てて、子猫を掴んで、玄関のドアを開けて、通路に立ち、階段の踊り場に子猫を投げ落した。踊り場で子猫は苦しそうに丸まったかと思うと、急に顔が女の顔に変わり、飛びかかってきた。
 顔に張り付いた猫をはがして、階段を駆け下り、公園へ向かった。背後で、母親が「見つかるよ」と叫んだ。右手に掴んだ猫はギャア、ギャア叫んで、必死にもがいている。逃がすものか、公園に捨ててやる。
 猫の爪で傷ついた顔から、血が噴き出していた。
 公園の街灯を目指して歩いていると、強い光に体が覆われた。
 「見つけたぞ!早く、捕まえろ」

 ここで目が覚めた。窓から朝日が差し込んでいた。

00:55:21 | falcon | comments(0) | TrackBacks