June 02, 2008

こぼし文庫

 4月28日に随筆家の岡部伊都子さんが逝去された。

 Falconは、沖縄に住んでいた頃、何度か竹富島を訪れたことがある。八重山諸島の中心・石垣島から船で約10分ほどで、島はそれほど広くない。レンタルサイクルで一回りしても、半日もかからない。安里屋ゆんたで歌われた安里屋くやまの家があり、澄み切った青空に赤瓦の屋並みが美しく、沖縄に来たなあと実感できる。観光シーズンでなければ、人も少なく、都会とは全く違った時間が流れて、夢心地になる。
 竹富島には、岡部伊都子さんが住むつもりで建てた小さな家がある。寄贈されて、島の子供たちに開放された「こぼし文庫」になっている。岡部さんから寄贈された図書のほかに、新たに購入された図書が所蔵されており、管理は竹富小中学校の保護者の方々が行っている。保護者の方にお願いして開けてもらうと、手狭だが、心地よい風が縁側から入り、図書の背を撫ぜるように吹き抜けてゆく。
 竹富島は石垣島からほど近いので、島の子供たちは頻繁に石垣島へ行き、塾へ通う子供は少なくない。石垣島には沖縄県立図書館の八重山分館もあり、石垣市立図書館もあるので、以前ほど、こぼし文庫を使う子どもたちは多くないようだ。それでも、島でイベントがあるときは、こぼし文庫が開放されて利用されているそうだ。

 沖縄の離島には図書館がないところが多い。そのため、各地には島の子どもたちのための文庫が設けられて活動している。
 しかし、残念な話もある。
 心ない観光客が無人の文庫の建物に上がり込んで、寝泊まりしして、ゴミなどを散らかして帰ることも多いと聞く。昔は沖縄の人たちは、お互いで信頼しているので、防犯なんて気にしないことが多かった。今は、物騒なことも多くなり、戸締りをしっかりする傾向が強くなっている。それでも、文庫を開放して気軽に使えるようにしているところも多い。文庫は島の子どもたちのものだ。見学する時は、節度ある態度を心がけたい。
 沖縄の離島には、本屋さんもなく、本を読みたくても、困っている子どもたちが多いことを心に留めてもらいたい。

 石垣島、竹富島にはホタルがいる。
 ちょうど今頃、夜になるとホタルの幼虫が尾から光を放っていることだろう。ヤシガニがかさこそ歩く音も耳にすることもある。

16:07:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks