March 08, 2008

昆虫たちの性転換

 古新聞を片付けていたら、また新たに驚愕の記事を発見しました。
 千葉大学の研究者を紹介する記事でした。その方は、キチョウという黄色い蝶がボルバキアと呼ばれる細菌に感染して、性転換が起こることを研究されているそうです。
 このボルバキアという細菌は、昆虫をはじめ、蜘蛛などの節足動物に感染して、性転換など生殖に関わる異常を起こすことで知られているそうです。その細菌が感染して、発生のどの段階で性転換を起こすかは詳しくは解明されていないようですが、感染する昆虫の種類によって起きる影響が異なるそうで、感染するとオスだけが生まれなくなる「オス殺し」、雌雄同体のようにオスとメスの性質、生殖器を持つ成体が現れたりするそうです。しかも、昆虫を含む節足動物の20%が感染していて、なかには共生関係にある昆虫もいるとか。
 ときどき、カブトムシで角の短いオスが生まれて、解剖したら卵巣と精巣があったとかいう新聞記事を見かけますが、きっとボルバキアの感染によるものなのでしょうね。
 この細菌、最近注目されている細胞膜の性質にも影響を及ぼすらしく、ホットな視線を集めています。
 以前、岩波新書で性転換する魚(クマノミやギンポの仲間など)についての本を読んで、びっくら仰天したのですが、ボルバキアという細菌にはもっと驚かされました。本当に不思議なことばかりです。
 研究者の方は、ボルバキアが引き起こす性転換などの現象を解明して、農薬を使わない害虫の駆除に役立てたいそうです。まだ事件が解明されていませんが、中国製餃子の事件で、農薬はもうコリゴリですね。農薬を全く使わない作物の生産ができることを望みます。
 かといって、ボルバキアを使った生物兵器が生み出されたり、環境に多大な影響を及ぼすことがあってはなりません。慎重な研究を望みたいですね。

10:19:58 | falcon | comments(0) | TrackBacks

末摘花は現代だったら美人かもしれない

 森谷明子さんの『異本源氏物語 千年の黙(しじま)』(東京創元社)を読み終えた。
 面白かった。読者として欲張りなことを言わせてもらえれば、関西弁で、さらに御所ことばで書いてもらったら、もっと面白かったなあと思う。勿論、現代の関西弁、京ことば、あるいは御所ことばにしたって、平安時代の言葉とは大きく異なるにちがいない。御所ことばは、遡って再現しても、江戸中期ぐらいの宮中の言葉を再現できるくらいだとおもう。それでも、少しは雰囲気が変わるだろう。いわゆる共通語、今日、東京周辺で話されている言葉で、紫式部(御主)や中宮彰子が話すのはぴったりしない。まるで街中のレストランや電車の中で会話する若い女性のように思える。かと言って、本場の関西弁で書かれていたら、東京出身のFalconにとって、この大著は一層読みづらかったかもしれない。なんともいえない、無理な要求なんだけどね。
 一応、推理小説と言えないまでも、ミステリーなので、細かい筋には触れない。平安時代の人物関係を頭に仕込んで読むと格段に面白い。
 『小右記』を書いた小野宮藤原実資がところどころで顔を見せてくれる。このオジサン、真面目な当時の官僚の1人なんだけれども、藤原道長が嫌いでしょうがない。史実はどうかわからないけど、森谷さんの作品では『源氏の物語』の大ファンで、そんな気持ちを人に知られまいと押し隠している。とても茶目っ気があって、魅力的である。

 さて、森谷さんの作品とは全く関係ないのだけれど、Falconも『源氏物語』は高校時代から大学まで読んでいた。高校3年生の選択授業で1年間『源氏物語』を読むクラスに入り込んでしまったからだ。もともと、理系に進学するつもりだった。理科は小学校時代に高校レベルまでマスターしていた。数学も嫌いどころか、些細な計算ミスがなければ、成績は良いほうだった。むしろ、国語と英語が苦手で、よく考えれば文系の大学へ進学できたことが不思議に思える。
 そんな昔話はともかく、『源氏物語』のなかで最も醜い女性と書かれている末摘花は、もし現代だったら、かなりの美人だったのではないかと思っている。平安時代の女性、少なくとも源氏物語に描かれた女性の美質は「ふくよか」であること、髪が黒々として豊かであることで、末摘花は髪は豊かで源氏は心ひかれたが、痩せていたことが醜いとされた。また鼻が長く、普賢菩薩の乗り物、つまりは象の鼻のようだったという。そのうえ鼻先が赤く、先の花弁を摘んで染料にするベニバナのようだから、巻名が「末摘花」と、なんとも意地悪な話しなのだ。
 この姫君、気立てはけして悪いわけではないのに、古風でぎこちなく、光源氏ともギクシャクした関係になる。しかも、父・常陸宮は亡くなり、母親もなく、頼れる親戚も少なく、古女房とひっそりと零落した暮らしをしている。
 調度品も古臭く、クロテンの皮など、時代遅れのものを使っている。ただ気になるのは、その調度品の多くが昔の舶来品が多いことだ。それも渤海国から伝わったものが多い。
 ここからはFalconの勝手な推理だが、末摘花の父・常陸宮は舶来品の貿易に関わる仕事をしていたのではないかと思っている。さらに、大胆に推理をめぐらすと、末摘花の母は中国の北の地方の民族、あるいはシベリアあたりにいた白人系の民族だったのではないかと思っている。あるいは中国から渡ってきた西域のトルコ系の民族だったのではないかと思う。そうすると、鼻が長い、いや、鼻が高い容貌の謎が解ける。つまり、末摘花はハーフの、現代だったら、もてはやされる美人にちがいないと思っている。しかも背丈が高く、痩身の、ファッションモデルにでもなりそうな美人で、話がぎこちないのも、外国語のなまりがあったのではないかと推理している。もっと言えば、彼女はロシア系の美人だったのではないかと思っている。現代風にアレンジすれば、お化けの出そうな古ぼけた洋館に潜むように暮す、ハーフの美人なのだ。
 いずれにせよ、大学時代からの持論で、何人かの人に話したから、誰かが論文に書いているかもしれないが、末摘花の人物造型には、伎楽面の胡人の姿があると思う。
 専門家の目から見たら、拙い発想だろう。でも、源氏物語を少しでも楽しんで読めたらいいと思っている。
 源氏物語では、末摘花よりも痩せている、醜い姿の女性がいる。花散里である。原文をしっかり読んで欲しい。源氏物語の入門書として、コミックの『あさきゆめみし』がよく読まれているが、残念なことに花散里は六条御息所よりもふくよかで、『肝っ玉母さん』を演じた京塚昌子さんのような姿に描かれている。原文では詳しく書いていないが、六条御息所のほうがふくよかだっただろう。六条は、痩せぎすの職場を取り締まるキャリア・ウーマンのように思われているが、実は全く違う姿を作者は思い浮かべて書いていたと思う。

09:26:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks