March 12, 2008

そんなに嫌わなくても

 今年の東京地方は寒かった。暖冬と思って、気を弛めていたら、あまりの寒さで、風邪こそ罹らなかったものの、気力が萎えていた。
 夏になれば、暑さのあまり気力が萎える。要するに、気力が萎える理由を「季節のせい」している。これじゃ、殺人の理由を「太陽のせい」にした、アルベール・カミュの『異邦人』の主人公ムルソーとほとんど変わらない。わがままな不条理の世界だとおもう。
 といっても、季節は巡って、3月、春だ。3月11日は東京は、急に暖かくなった。なのに、朝からほとんどの時間を病院の待合室で過ごした。長く待っても診療時間はわずかだ。
 「花粉症?」おかげさまで、花粉症ではない。東京は、北風が吹けば群馬・栃木の山から、西風が吹けば秩父・奥多摩から、南風が吹けば丹沢から、スギの花粉が飛んでくる。東京の春は花粉地獄だ。
 病院へ来たのも、以前からわずらっている咽喉の違和感である。最近は、胸や肩まで痛み出した。血液検査をしても、その他の検査をしても、どこも異常がないのに、咽喉だけがヘンだ。前にも書き込んだかもしれないが、逆流性食道炎かもしれない。診察の結果、下咽頭に炎症が見られるので、「おそらく逆流性食道炎でしょう」と医師が言ってくれた。「まずい病気だったら、どうしよう」と、試験の結果を見る時のようにドキドキした。試験でも、検査でも、結果を知るときは、つらい試練に耐えなければならない。
 逆流性食道炎は、夜遅く食事をして直ぐ寝たり、腹筋運動したりすると、なりやすい。腹筋を鍛えるスポーツ選手や、オペラ歌手がよくかかる病気で、病気というよりも、症状と言ったほうが良さそうだ。水泳も原因の一つかもしれない。水平になり、しかも腹部に水圧がかかる。胃液が食道へ逆流することもありえる。

 そんなわけで暖かくなった春の一日、病院で『海辺のカフカ』下巻を読み耽った。
 先日受けた人間ドックの結果が郵送で届く。特に異常なし。血液検査は完璧に近い数値。体脂肪は13%で運動選手並。もともと脂っこい料理は嫌い。年齢の割に、いい加減な生活の割に、理想的な健康だ。
 冬と病気が「そんなに嫌わなくても良いじゃない」と耳元でささやく。なんでも上手に付き合うことが大切なのかもしれない。間もなく本格的な春になる。また、忙しい毎日になる。

01:44:00 | falcon | comments(0) | TrackBacks