February 27, 2008

アレオパジティカ;言論の自由

 「ソロモンは多読は体を疲れさせると教えています。しかし、彼も霊感を得た別の人も、これこれの書物を読むのはいけないと言っていません。」(ミルトン著;原田純訳『言論・出版の自由:アレオパジティカ』岩波文庫 p.28)

 この一文に目が釘付けになった。そして官能的に心がしびれた。

 もし、この一文が、最初の一文が図書館に掲げてあったら、なんて愉快だろう。
 「多読は体を疲れさせる」そのとおり、活字中毒に癒しの一言!
 子どもたちに読書をさせようと殺気立ち、躍起になっている読書ボランティアのオバサマたちは卒倒してしまう一撃!

 あの『失楽園』(Falcon未読)を書いたジョン・ミルトンの『アレオパジティカ』が新たに翻訳された。



 実は、以前「出版の自由」とか「思想の市場」というテーマを調べていたとき、『アレオパヂティカ』を読もうと思って、国立国会図書館へ行き、なんと1953年に出版された岩波文庫のミルトン著『言論の自由』を読みかけたことがある。なにしろ、酸性紙で茶色のシミが浮き出ていて、パリッと破れそうで、こわごわめくり、活字(今から50年以上も前の本物の活字印刷!)がゴツゴツしていて、しかも文語調なので、恐々読んで、閉館間際にカウンターに返してしまった。それで、何かが書いてあったか記憶に残らず、是非とも、もう一度、読んでみたいと思っていた。Falconにとっては、幻の書だった。
 新たに対面した本書は読みやすくなっていた。だが、博識のミルトンには到底かなわないし、難解な部分は少なくない。彼は、古今東西の書物に対する攻撃、弾圧を並べあげて、イギリスの17世紀、激動の時代における検閲、出版統制に断固として立ち向かい、渾身の力を振り絞り、熱く語る。
 書物や読書に対して警句・箴言(アフォリズム)に満ちている。そのまま図書館の入口に掲げたいキャッチコピーが散見できる。

 読書、書物、検閲、出版、言論、教育について語るとき、この一書ははずせない。「言論の自由」「出版の自由」「表現の自由」さらに、「図書館の自由」の原点ともいえる記念碑的名著である。
 小説で、アニメで、「検閲」「図書館の自由」が弄ばれる現在、読むべき書がもたらされた。

03:13:31 | falcon | comments(0) | TrackBacks