January 27, 2008

知識革命と学校図書館

 1月17日に公表された中央教育審議会の学習指導要領の改善に関する答申を読まれたでしょうか。
 学校図書館の重要性が取り上げられました。司書教諭についても触れられています。現場で取り組んでいる人がみれば、物足りないでしょうが、千里の道の一里塚です。この点は、評価したいと思います。
 今度の答申のキーワードは、「知識基盤社会」です。PDF文書で150ページ以上ですが、知識基盤社会は13例ある。ところが情報社会はわずか2例です。しかも、脚注のところです。
 答申では知識基盤社会の根拠を1999年のケルン・サミットの提言に求めていますが、さらに辿れば、P.F.ドラッカーの『断絶の時代』などの著作に示された「知識社会」になると思います。


 今まで、情報化時代、情報社会が叫ばれて、「情報活用能力」「問題解決能力」を身につける必要性が問われてきました。タカ・アンド・トシのツッコミじゃないけれど、「情報か!」です。(元のツッコミは、「欧米か!」です。)さらに、「どんだけぇー」とツッコミいれたくなります。
 学校図書館で「情報活用能力を身につける」というと、どことなく相容れない感じがしていました。つまり、「情報」という概念はコンピュータと結びついているために、「読書の場」と考えられている図書館(学校図書館)とは「そんなの関係ねぇ!」と思われていました。教科教諭の先生たちからは「断片的な情報よりも、体系的な知識を身につけるのが大切じゃないか!」と声にならない呟きが洩れていました。
 本当は、「情報活用能力」の情報は、コンピュータで扱うコトだけでなく、図書・雑誌・新聞などのメディアで扱うコトも含みます。
 今回の答申で示された「知識基盤社会」の概念では、単に知識だけでなく、情報も技術も内包しています。

 答申の内容はわかりにくい部分があります。
 アラン・バートン・ジョーンズ著『知識資本主義』(日本経済新聞社)に、わかりやすく解説されています。「暗黙知」と「形式知」の喩えは、納得してしまいました。経済、経営、企業という言葉が苦手な人は、後半の章の教育、学習に注目しましょう。

 19世紀から20世紀へは工業化が進んだ時代で、「土地」(農業中心の経済)から「モノ」への転換が図られた時代でした。21世紀は「モノ」から「知識」への転換が図られる時代なのです。関連する概念としては、「脱工業化社会」「ポスト資本主義」が思い浮かびます。イヴァン・イリイチの思想へも波及する考えです。

 これまで「心」とか、「情報」とか、掴(ツカ)み所の無いウナギのようなものを学校教育と学校図書館に求められてきました。そのため、読書活動、学習活動の意義が、理解する人たちの間で混乱していました。学校図書館に関する会合で、「学校図書館は、読書で心を豊かにするのが優先なんですか、情報活用が優先なんですか」という論議がありました。答申で知識基盤社会が提唱されたおかげで、より堅固な概念としての「知識」を身につけることが大切ですということができます。これは「知識革命」といえます。(えっ、『図書館革命』を意識しているか?って、それはチョッと関係ないことですけどーー)

 バリバリの文学系のFalconは、これまで図書館では3類の社会科学の書架、特に政治・行政、法律、経済のあたりは、「そんなの関係ねぇ!」と遠巻きにしていました。でも、今回、改めて関連の本を読んで、社会科学の視点は重要だなと思うようになりました。

17:20:39 | falcon | comments(0) | TrackBacks