February 11, 2007

ケプラー疑惑!

 久しぶりに知的興奮を感じた本に出会いました。
 ジョシュア・ギルダー,アン-リー・ギルダー著『ケプラー疑惑』(地人書館)
 時代は中世からルネサンスへ、宗教改革から近代社会へ転換する最中、二人の天才天文学者が運命の意図に導かれて、学芸の都プラハで出会った。一人はデンマークの貴族で、実測と観察を着実に重ねるティコ・ブラーエ、もう一人はドイツの商人の息子として生まれ、理論を夢想するケプラー。若い頃、親族との決闘で鼻に傷をうけて、その親族を許したというエピソードを持つブラーエは、このエピソードだけでも、剛毅でおおらかな性格だったことがわかります。一方、子どものころから体調が優れず、人付き合いが悪いケプラーは、貧乏の連続で、実家の遺産目当てで結婚する。ケプラーは自分の理論のために、ブラーエの観測結果が欲しくてたまらなかった。やがてブラーエは不可解な死を遂げる。ケプラーは念願の観測結果を手にして、後世に残る「ケプラーの法則」を発表した。二人に何が起きたのか?ケプラーが残した文書と手紙を下に、推理小説のよう展開する歴史ミステリーです。
 本書では脇役ですが、プラハの王宮に住み、神秘主義に凝り固まったハプスブルグ家のルドルフ2世が、妖しい魅力を放っています。
 日本の高校の世界史の教科書では、ほとんど触れられない神聖ローマ帝国の皇帝ルドルフ2世の王宮には、ヨーロッパ全土から学者や芸術家、中には怪しげな占星術師、錬金術師が集まってきます。
 図書館学を学んだ人は、一度は見たことがあると思いますが、図書を組み合わせただまし絵の肖像画『司書』を描いたアルチンボルドも、ルドルフ2世の宮廷に招かれた芸術家の一人です。アルチンボルドの『四季』の連作は、ルーブル美術館にありますね。ロバート・J・W・エヴァンズ著『魔術の王国:ルドルフ2世とその世界』(ちくま学芸文庫)も、今読んでいます。
 少し前、プラハに行ったときのことを思い出しました。 [more...]

12:07:24 | falcon | comments(0) | TrackBacks