December 04, 2007

情感と根性

 雑誌『出版ニュース』(2007年11月下旬号)に掲載された肥田美代子氏「言語力で日本の未来を拓く」を読みました。
 ちょっと納得がいかないというか、それともFalconの「読解力」が低下したのか、素朴な疑問を述べます。
 最初に、肥田氏は子どもの頃に受けた教室での知識詰め込み型一斉教育を思い起こし、あまり良い印象が無いと述べています。ただし、忍耐力が身についたと述べています。確か「耐力」と表現していました。
 それに対して、物があふれかえり、お金さえあれば、欲しい物が手に入る時代に生きる現代の子どもたちには「耐力」が無く、校内暴力などの荒廃した学校の状況を招いた原因は「耐力」の無さであり、その学校の問題を解決するのは読書であるとして、読書から得られる「情感」が大切だと述べています。そこで、朝読などの実践をして、荒廃した学校の問題を解決した葛飾区の小学校の例を持ち出します。読書から得られる「情感」、さらにじっくり読書に取り組むことで「耐力」が身につくと言うのです。

 Falconが納得しないのは、校内暴力やイジメの原因を「耐力」の無さとしている点です。校内暴力やイジメは、肥田氏もあまり良い思い出の無い知識詰め込み型の一斉授業の教育に問題があったと思います。物があふれかえった時代で「耐力」が無くなったことが原因だとは思えません。
 読書は悪いことではないと思いますが、今の子どもは本物の人と人とのふれあいが少ないために、いくら読書をしても「情感」はつかみきれないと思います。また、自然に触れ合うことが少なく、図鑑や百科事典でしか見たり、経験したりできないのはとても残念なことです。カブトムシやクワガタムシは森や林で捕まえる、そうでなければ「情感」のない、図書の「情報」の受け売りになります。海外から輸入されたカブトムシやクワガタムシは、「情感」のこもらない「形ある情報」にすぎません。校内暴力はたしかに良くないことですが、20年くらい前に校内暴力をしていた子どもたちのほうが、人と人との生のふれあいがあったと思います。

 肥田氏は短い文章で論点を述べて、持論を展開していますが、論点の分析、論理の展開に無理があり、すっきりと理解できないところがあります。肝心なところを「情感」という言葉で逃げている気がします。「情感」はひっくり返せば「感情」です。感情を押し殺す「耐力」を身につけることは、肥田氏の最初の論点からすれば、矛盾します。「情感」で誤魔化さないで、論点をしっかり分析してほしいと思います。

 最近、耳にしなくなった「根性」という言葉は、もともとは悪い意味です。「負けじ根性」なんて言います。今どきの負け組にピッタリの言葉です。「根性」はひっくり返せば、「性根」です。「性根が悪い」と言いますが、「性根が良い」とはあまり言いません。
 東京オリンピックのときに女子バレーの監督が「根性を持て!」と言ったために、スポーツ=素晴らしい=根性となって、『巨人の星』などのスポ根アニメ全盛になり、とうとうTシャツに張り付いたカエルまでが「ど根性!」って、やる気の無いヒロシにハッパかけました。

00:16:54 | falcon | comments(0) | TrackBacks