November 17, 2007

イギリスとフランスの教員の給与

 文部科学省が平成18年3月に発行した『諸外国の教員』(教育調査第134集)によれば、日本と韓国の教員の給与は、ヨーロッパ先進国の教員の給与よりも、比較的高い。勿論、その国の物価、社会保障制度などをあわせて考えなければ、実感としての給与の高さは比較できないけれども、それでも日本の教員は恵まれている。
 イギリスの教員の年俸は、平均的に300万円から400万円程度。イギリス経済の好調振りで、物価は高いので、日本の教員よりもかなりきついと思う。
 フランスの教員の年俸は、やはり400万円くらい。ユーロはこのところ高値で強気の姿勢のため、物価は上昇中。しかしながら、フランスは農業国であるため、食料品は驚くほど安い。果物は日本の半値以下で、今日本のスーパーマーケット店頭に並んでいる「ラ・フランス」という西洋ナシは、フランスではもう少し小ぶりで1ユーロくらいで買える。

 図書館、特に学校図書館のことを考えるときに、その国の教育制度を十分に踏まえないと、誤解してしまうことがある。
 今、日本で大注目のフィンランドの学校教育だが、フィンランドの公共図書館と学校図書館は、いろいろな問題を抱えている。
 フィンランドの公共図書館は、世界の国々の公共図書館の中で、最もよく利用されている。結論から言えば、本の値段があまりにも高いので、書店で買って本を読むよりも、公共図書館で本を借りて読むしかないのが、その理由である。フィンランドの本の値段が高いのは、フィンランド語を理解できる人が少なく、市場のシェアが狭いためで、必然的に値段が高くなる。英語やフランス語、ドイツ語などであれば、自国だけでなく、国際的に販売できるし、翻訳されて、二次的著作物としての著作権料も稼げるから、本の価格は安くなる(それでも、洋書を日本で買うと高い。これは輸送料と輸送にかかる保険料が高いため)。

 「えー、そんなこと言ったって、フィンランドの作家が書いた『ムーミン』は国際的に読まれているじゃないか!」
 作者のトーベ・ヤンソンさんは、スウェーデン系のフィンランド人、『ムーミン』はスウェーデン語で書かれている。だから、翻訳も容易で、国際的に読まれたわけ。

 現象を取り上げて、「素晴らしい」というのは簡単だ。でも、素晴らしいの背景を探った上で、「素晴らしい」と考えなければ意味が無い。

 日本の図書館情報学、いや、全ての学問においても、拝米主義がはびこっていて、アメリカを礼賛すれば、事が済むと思っている輩が多い。

 だんだん論点がずれているが、「10年前アメリカで起こったことが、今の日本でも起こっている」と指摘して粋がっている評論家がいる。それは、日本の拝米主義者がアメリカのやり方を真似してきたからで、アメリカのやり方を真似しなければ、アメリカと同じ事が日本で起こる可能性は遥かに少なくなる。これは、小学生でも理解できる理屈だ。まやかしの発言に騙されてしまうほど、日本人のメディアリテラシーは貧困である。

10:20:04 | falcon | comments(1) | TrackBacks