February 26, 2007

仲間意識がイジメを生む

 昨日、京都大学名誉教授で数学者の森毅さんの講演を聴きました。
 講演の最後のほうで、「仲間意識がイジメを生む」とおっしゃっていたことに、ものすごく納得しました。
 「集団へ協調性」よりも、「誰とでも仲良くなれる社交性」が大切だともおっしゃっていました。
 学校では「みんなと仲良くしなさい」と規律と協調性を身につけさせられます。そのほうが先生たちにとって子どもたちを管理しやすいからです。(戦争中の「隣組み」がそうです)仲間意識が形成されると、異質なものを排除したり、集団の中でいがみ合ったり、一人ひとりが序列化されて、優位に立つ者が下の者を圧制しますとも説明されていました。戦前の軍隊の例も挙げていました。
 一人ひとりの個性と立場を重んじ、誰とでもつきあえる社交性を身につけることが大切ともおっしゃっていました。
 文部科学省が小学生と中学生へ配布している副教材のような「心のノート」には、「友情」「思いやり」「連帯感」などが綴られています。自然を崇高と思う心、郷土を愛する心、日本文化を愛する心、そして、愛国心を養い、国際社会で協調するとありますが、これらがイジメを生み、やがては国内での紛争を生み、国と国との戦争を生むのでしょう。「友情」や「思いやり」「日本文化を愛する心」、それぞれは悪いことではありません。でも、大人たちの思惑で捻じ曲げて子どもたちに伝えてはいけないと思います。

03:27:05 | falcon | comments(1) | TrackBacks

February 16, 2007

フランスに学ぶこと

 昨日(15日)のNHKのニュースで「フランスは少子化対策に取り組み、出生率が上がってきている」と報道されていました。ニュースで取り上げられなかったことをいくつか紹介します。
 フランスでは、3歳から公立の幼稚園に入園できます。パリでは、町のあちこちに幼稚園があり、朝と夕方に保護者が送り迎えに集まっている光景を頻繁に目にします。(子どもを育てている人は、残業をしないようです。終業時間をきちっと守っているのでしょう)
 小学校(5年間)は水曜日か木曜日がお休みです。となると、週4日制になりますが、その分、他の日の授業時間数が多くなっています。小学校でも、夕方になると、保護者が送り迎えで、校門の前で群れなしているのを見かけます。
 中学校(4年間)は水曜日か木曜日の半日授業です。午前授業で午後休みが多いのですが、午前休みで午後授業の学校もあります。高校(3年間)も水曜日か木曜日は半日です。
 休みの日は子どもたちは何をしているかというと、習い事や興味のあるスポーツ・クラブに参加しています。
 フランスの学校図書館は、最近20年くらいの間に充実してきました。
 幼稚園と小学校にはBCD(図書館文献センター)という学校図書館があり、1984年以降、国民教育省の省令で充実させるようになっています。小学校ではフランス語教育、つまり国語教育が徹底していて、そのために読書と文章を書くことを最重要課題にされています。移住民や他の文化圏で生活してきた児童であっても、「同化政策」により、フランス文化を言語を通して学ぶのです。BCDでの読書活動は、「趣味や娯楽のための読書」ではなく、「学習のための読書」(当然!)です。
 中学校、高校、職業高校にはCDI(文献情報センター)という学校図書館があり、1990年(制度は1989年に確立)からドキュマンタリスト教員という、国家試験で免許を認定されて採用された、日本でいえば司書教諭に相当する、専任の教員がいます。(制度の上で、日本の司書教諭はフランスのドキュマンタリスト教員とは「似て非なるもの」です。)
 2000年以降、総合的学習の時間が、高校、職業高校、中学校にあり、CDIを使って学ばれています。
 日本では、OECDの学力試験(PISA)でトップになったフィンランドほど騒がれていませんが、フランスは教育にかなり力を注いでいます。特に学校図書館の改革とその充実という点では、注目に値します。こうしたことも出生率が上がってきている理由の1つだと思います。

02:32:42 | falcon | comments(0) | TrackBacks

February 15, 2007

良い本、見っけ

 おととい、パオロ・マッツァリーノ著『つっこみ力』(ちくま新書)を買って、今、眠れないので、途中まで読んでいました。
 メディア・リテラシーよりも、つっこみ力と言い換えたほうがよい著者の主張に納得します。批判力は角が立つというのも納得します。
 確かに数年前、図書館関係者の間でもメディア・リテラシーという言葉がもてはやされていました。その関係の本を何冊か読んでみましたが、どことなく馴染めなかった気がしています。「外国の学校図書館でも実践しているよー」と言われると浮き足立つ関係者を見ていて、変だなあと思っていました。それこそ、関係者を批判したくなったのを覚えています。
 この本を読んで、「つっこみ力」のほうが、しっくりきています。

 情報活用教育だの、コンピュータ・リテラシーだの、訳わからない言葉が蔓延っていて、大学の授業では意味の説明ばかりになっています。大体「シー」がつく言葉は、「エクスタシー」「いやらしい」など妖しい、怪しいものが多い。

 良い本を見つけました。

04:07:10 | falcon | comments(0) | TrackBacks

February 13, 2007

子どものマナー、ほっとけない!下品社会

 最近、「格差社会」「下流社会」「国家の品格」と話題になっています。しかし、はっきり言って、「下品社会」です。
 Falconは東急田園都市線を普段乗っていますが、高校生、中学生が電車に乗り込んでくると、うるさい!今日は、我慢しきれず、二人の女子高校生を注意しました。先輩・クラスメートへの悪口、教師への不満、「彼氏」の話、週末の予定を際限なく甲高い声で話しつづけ、挙句の果てに「今日穿いているパンツの色がどうの、こうの」になったときには、聞くに堪えず、「電車のなかでは静かにしてくれないかな」とかなり冷静に抑えて注意しました。「パンツの話で、にやついていた」と因縁つけられても迷惑です。
 高校生、中学生だけでなく、小学生もうるさい。小学生だから仕方ないかと諦めてしまいますが、やはり目に余る時は注意するべきです。
 今、入学試験シーズンだからこそ、学校関係者、保護者の方々に、申し上げますが、子どもが通学に電車を使うときには、電車の中では大声で騒がない、空き缶・ペットボトルを捨てないなど、マナーを躾てください。制服を着ていれば、学校が特定できて、その品格が世間から問われます。どんなに学力のある児童・生徒を教育していると公言しても、マナーの悪い児童・生徒がいるだけで、学校の評判を落としますよ。
 最近は、レジャーに自家用車を使う家庭が多いから、電車の中でのマナーを保護者がしっかり教えてないと思います。公共の場のマナーは、学校では教えられません。これは保護者の責任です。
 それから、ホームで駆け回っている子どもを見かけますが、マナーの問題どころか、これは危険なので、絶対に止めてもらいたいし、回りの大人は注意して欲しい。以前、地下鉄Y駅のホームでランドセルを背負った小学生が駆け回っていました。ホームは、高齢者や身体の理由で不自由を感じている人がいます。もし、ぶつかってホームから線路に落ちたら、危険極まりない。
 まず安全を、そしてマナーを守って欲しい。経済(お金)や教育よりも大切だと思います。

22:46:18 | falcon | comments(0) | TrackBacks

February 11, 2007

ケプラー疑惑!

 久しぶりに知的興奮を感じた本に出会いました。
 ジョシュア・ギルダー,アン-リー・ギルダー著『ケプラー疑惑』(地人書館)
 時代は中世からルネサンスへ、宗教改革から近代社会へ転換する最中、二人の天才天文学者が運命の意図に導かれて、学芸の都プラハで出会った。一人はデンマークの貴族で、実測と観察を着実に重ねるティコ・ブラーエ、もう一人はドイツの商人の息子として生まれ、理論を夢想するケプラー。若い頃、親族との決闘で鼻に傷をうけて、その親族を許したというエピソードを持つブラーエは、このエピソードだけでも、剛毅でおおらかな性格だったことがわかります。一方、子どものころから体調が優れず、人付き合いが悪いケプラーは、貧乏の連続で、実家の遺産目当てで結婚する。ケプラーは自分の理論のために、ブラーエの観測結果が欲しくてたまらなかった。やがてブラーエは不可解な死を遂げる。ケプラーは念願の観測結果を手にして、後世に残る「ケプラーの法則」を発表した。二人に何が起きたのか?ケプラーが残した文書と手紙を下に、推理小説のよう展開する歴史ミステリーです。
 本書では脇役ですが、プラハの王宮に住み、神秘主義に凝り固まったハプスブルグ家のルドルフ2世が、妖しい魅力を放っています。
 日本の高校の世界史の教科書では、ほとんど触れられない神聖ローマ帝国の皇帝ルドルフ2世の王宮には、ヨーロッパ全土から学者や芸術家、中には怪しげな占星術師、錬金術師が集まってきます。
 図書館学を学んだ人は、一度は見たことがあると思いますが、図書を組み合わせただまし絵の肖像画『司書』を描いたアルチンボルドも、ルドルフ2世の宮廷に招かれた芸術家の一人です。アルチンボルドの『四季』の連作は、ルーブル美術館にありますね。ロバート・J・W・エヴァンズ著『魔術の王国:ルドルフ2世とその世界』(ちくま学芸文庫)も、今読んでいます。
 少し前、プラハに行ったときのことを思い出しました。 [more...]

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