July 22, 2006

絵画の中へ

 一応、児童文学ですが、むしろ大人が読むと面白い作品を紹介します。
 プラド美術館展のところで触れましたが、あの名画『侍女たち(ラス・メニーナス)』の人物たちが登場する作品を紹介します。
 エリアセル・カンシーノ作『ベラスケスの十字の謎』(徳間書店)

 読み終えたとき、プラド美術館を訪れた時の感動が蘇えってきました。『ラス・メニーナス』は、けして華やかな絵ではありません。人物の視線が複雑に交差して、鑑賞している私たちが絵画の中に入り込むのです。不思議な絵です。フランスの思想家ミシェル・フーコーは著作『言葉と物』でも、この絵画を論じています。
 『ベラスケスの十字の謎』では、国王フェリーペ4世と画家ベラスケスが、主人公の少年の目を通して、目の前にいて呼吸が感じられるくらい、活き活きと描かれています。

 プラド美術館へ行ったことがない人は、美術全集か、インターネットでベラスケスの絵を見ながら、読んでください。道化や小人たちの人間性を尊重して、慈しみの目を向けた画家の深い洞察は永遠の至宝でしょう。

22:43:24 | falcon | comments(0) | TrackBacks