December 25, 2008

不老長寿の夢

 最近、身近な人が癌で亡くなった。また、もう一人の身近な人が末期がんの一歩手前で、手術をして、何とか命を取り留めた。
 がんの治療について気になったので、がん治療に関する本を読んでいた。



 30年前に比べて、がんは怖い病ではなくなった。だから、今は相当重篤な場合でも、医師は患者にはっきりと癌と告げる。
 たしかに初期の段階で適切な処置を行えば、確実と言えないまでも、80パーセントは治癒、または寛解(ガン細胞が完全に無くなっていないが、ある程度は健康に過ごせる状態)になる。
 胃癌の手術は日本が世界で最も高い水準だそうだ。しかし、発見が遅れたり、未分化癌で臓器全体に広がっている場合は、治癒は難しい。
 最近は非常に副作用の少ない抗がん剤が開発されている。また、人によっては高い効果が期待できる場合があるようだ。しかし、癌と一口に言っても、いろいろな種類の癌があり、効果がある場合とない場合があるので、全面的に期待はできない。
 まだまだ、確実な治療法は無い。安心はできないが、適切な処置ができるようになってきたのは、嬉しいと思う。

 周りの人たちに癌が見つかる少し前に、iPS細胞のことが気になたので、平凡社新書を読んでいた。



 生物学は大好きだったので、ワクワクしながら読んだ。難解になりそうな説明も、高校の生物のレベルで十分に読みこなせる。福岡伸一先生の本も面白いが、この本も実に引き込まれるほど面白い。
 現時点では、クローン技術にしても、ES細胞にしても、iPS細胞にしても、再生医療に応用できる段階ではないらしい。しかしながら、確実に進歩はしている。
 iPS細胞は癌遺伝子の一部の機能を活用しているが、今後は別の遺伝子でも増殖できる方法が考えられているようだ。

 癌を克服して、制圧できるとなると、私たちの死生観はどうなるだろう。エイズも徐々に怖い病気ではなくなっている。
 癌が完全に治療できるのが、人類最大の望みであるけど、生きる苦しみを味わうことになるも怖い気がする。

18:54:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 23, 2008

フランス革命は「図書館革命」にならず

 フランス革命と言っても、1789年に始まり、ナポレオンの登場により集結するのを、フランス人たちは大革命と呼んでいる。ナポレオンがセントヘレナ島に流されたあと、王政復古になり、1830年に7月革命が起きても王政が続き、1848年の2月革命で共和政になり、またナポレオン3世の第2帝政が始まり、と二転三転しながら、共和政が確立してゆく。

 ところで、フランス革命は図書館の発展に大きな影響があったかというと、無かったと言うべきであろう。むしろ、悪影響だったというのが正解。大革命によって、王政が廃止されると、まず王立図書館、つまり国王所蔵の図書館は政府に没収されて、民衆に開かれた国立図書館になる。貴族や修道院が所蔵していた書物も、すべて政府に没収されて、各地の図書館になった。と書けば、一部の王侯と貴族、修道僧たちが知識を独占していたのが、民衆のものとなって、良かったじゃないかと思われるかもしれないが、この当時、民衆が通う学校がなく、識字率はきわめて低く、革命の活動家を除くと、図書館の恩恵を受けた民衆は少ない。
 おそらく、革命のどさくさで、散逸した書物が多かったに違いない。なにしろ、貴族の館だ、修道院だと、民衆があたりかまわず襲撃していたのだから、書物を大切にしようなんて気は起きなかっただろう。知識のある貴族や聖職者は、亡命するか、ギロチンの犠牲になるかのどちらかだったし。
 フランスで、今のように街のあちこちに図書館がつくられて、広く利用されるようになるのは、意外と最近のことで1980年代からなのだ。

 もともと公立図書館は、19世紀後半からイギリスとアメリカで発達した。イギリスも、アメリカも、ヨーロッパ大陸からは隔たった地で、ギリシア・ローマ、そして中世、ルネサンス以来の学問の伝統が無いために、人々が大陸からもたらされる知識を共有したいという欲求から始まったのが公立図書館である。またイギリスも、アメリカも、プロテスタントの国だから、飲酒の習慣をやめさせて、労働力を高めるために、徒弟学校などで読書を勧めたのも要因である。
 フランスをはじめとした大陸側の国々は、ギリシア・ローマの時代から引き継いだ学問と知識の伝統があったので、イギリスやアメリカのように、知識をみんなで共有しようという発想がなかった。知りたければ、そこにあり、そのうえ、身分制度のもとでは、生まれで職業が決まるから、無理して専門的な知識を学ぶ必要はなかった。

 フランスで図書館に影響を与えたと言えば、むしろ、革命前にできた『百科全書』のほうが重要だろう。最も古い百科事典は他にあるが、分量として申し分のない、最新の知識と技術を盛り込んだ百科事典は『百科全書』と言える。まさに啓蒙主義の集大成と言える。
 

13:29:59 | falcon | comments(0) | TrackBacks

「フランス革命」にハマる

 Falconは大学入試の社会科で世界史を選択して、かなり勉強した。覚えることがたくさんあったので、最近はかなり忘れかけている。
 フランス革命といえば、池田理代子さんのコミック『ベルサイユのばら』が思い出される。オスカルやアンドレは創作された人物だけれども、オスカルのように男装の麗人はフランス革命で大活躍していたらしい。
 というのも、安達正勝著『物語フランス革命』(中公新書)で、民衆の側で男装して、他の男の兵士とともに、戦った女性たちがいたという記述を読んで、驚いた。もっとも、オスカルのような国王側の近衛兵にはいなかっただろうけど、フランス革命で活躍した男装の麗人は全くの嘘ではないらしい。

 ルイ16世と言えば、王妃マリー・アントワネットの言いなりで、錠前づくりと狩猟が趣味、政治力の欠如した、鈍重、凡庸な王様という印象が強い。しかも、肖像画を見ても、垂れ目で、でっぷりとした肥満体形、人の良さそうな、お育ちの良いオッサンにしか見えない。お爺様のルイ15世は、少なくともブルボン家の国王の中ではとびきりの美男、おそらくフランス史上でも最もハンサムな国王だろう。ルイ15世の曾お爺様のルイ14世は太陽王と言われただけに、豪壮華麗な衣装に身を包み、威厳をたたえた表情は王の鑑ともいえる。それに引き替え、ルイ16世の何とも言えない頼りなさと言いたいところだが、本書を読むと、意外にも英邁で、革命に共感して、推進した優れた国王であることがわかる。バカ殿のイメージは、革命後につくられたものなのだろう。

 同じく安達氏が以前に出版した『死刑執行人サンソン:ルイ16世の首を刎ねた男』(集英社新書)も続けて読んだ。フランス革命の影の主人公である死刑執行人の波乱に満ちたドラマで、フランス革命のもう一つの歴史が語られる。革命期だけで2,000人以上の人が断頭台で命を落とした。すべての最期の姿を見届けたのが、シャルル・アンリ・サンソンだ。言われもない差別を受けて、苦悩の果てに、国王をも手にかけた男の胸の内を知り、革命という名のもとに、多くの人々の血が無残に流されたことを直視すべきと思う。

 ちょうど読んでいる最中に、映画『ブーリン家の姉妹』を見た。こちらは、フランス革命よりも300年くらい前の話だ。
 エリザベス1世の母であるアン・ブーリンとその一族の物語。当然、シェークスピアなどの歴史劇を下敷きにしているのだけれども、台詞回しが恐ろしいくらいに胸にしみる。
 男子を産むことのできなかったアン・ブーリンは、処刑されるのだけれども、高貴な人の待遇で、斬首される。当時は、庶民は絞首刑で、身分の高い人は斬首だったらしい。これはフランス革命の直前まで変わらなかった。革命中に、身分の低い人も、貴族と同様にギロチンの犠牲になった。
 アン・ブーリンの罪状は、反逆罪並びに近親相姦罪。エリザベスの出産後、王の子を宿せなかったために、多くの男と交わり、兄弟とも交わったという。そういえば、王妃マリー・アントワネットも、実の子と交わったという罪とともに、断頭台にかけられた。たとえ罪を問うにしても、近親相姦という屈辱的な罪を着せて問うのは、余りにも残酷すぎる。

 この後は佐藤賢一さんの『小説フランス革命』を読もうと思っている。そういえば、塩野七生さんの『ローマ人の物語』の続きが出版された。正月は読書三昧になりそうだ。



12:20:03 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 11, 2008

質量保存の法則の発見者もギロチンの犠牲に

 たぶん高等学校の化学の時間に学ぶ「質量保存の法則」や、燃焼に酸素が関わることなどを発見したフランスの科学者ラヴォアジエも、フランス革命で断頭台の露に消えた一人です。
 彼は裕福な生まれではなかったようで、化学の実験器具を買うために徴税請負人で収入を得ていました。またルイ16世の治世で国家財政にもかかわり、立て直しをしていたようですが、税金の徴収をしていたために、処刑されました。
 一方的に意見を形成すると、こういう悲劇が起きるのですね。

00:25:38 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 10, 2008

国家公務員を袋叩きにするのは止めてほしいなあ

 テレビの民放局の朝番組を出勤前に見ている。司会者の彼が、国家公務員の職務怠慢、無駄遣い、高給取りを、庶民の立場に立って、正義と公憤を振りかざし、画面いっぱいに怒りを訴える。
 まあ、たしかに、そういう国家公務員もいる。いないとは言えない。だけど、麻生首相が「医者は常識がない」と口走って、失言を責められたように、ほんのわずかの人が時には常識がないかもしれないが、厳しい条件の中で、懸命に人の命を救うために努力されている医師たちが大勢いる。国家公務員のすべてが安穏に仕事をして、民間企業と比べて、高給を税金から頂いているわけではない。司会者の彼は番組の制作者から言わされているのだから、彼を責める気にはならないが、もっと冷静に分析してほしい。

 Falconは以前、国家公務員をしていた。
 平成元年の頃、バブル経済が頂点に達して、爆発寸前だった。そのころ、民間企業は湯水のようにお金が溢れて、国家公務員の初任給よりも、民間の新入社員は高い初任給を支給されていた。地方公務員だって、都道府県の職員、市の職員は、国家公務員よりも高い給与を得ていた。
 その頃、国家公務員になった。初任給は、田舎の月額のアルバイト代よりも、安かった。難しい試験に合格して、国の公務員になれたと思ったら、人前で口にできない給与だった。民間企業に勤めた友人には馬鹿にされるから恥ずかしくて言えなかった。公立学校の教員になった友人からは憐みの言葉をかけてもらったくらいだ。クラス会へ行くと、肩身が狭かった。
 今の職に就く前で、民間の給与とやっと肩を比べられるくらいになった。
 今でこそ、民間と比べて、国家公務員は高給取りで、福利厚生が恵まれているかもしれない。だけれども、人に蔑まれるほど薄給だった過去を考えてほしい。

 『物語フランス革命』(中公新書)を読んでいて、貧乏な貴族が、革命期に貴族だったからという理由で民衆から蔑まれ、挙句の果てに死刑になったことに思いを馳せた。貴族、貴族と言われたって、みんな贅沢な生活をしていたわけではない。三部会で第1身分だった聖職者階級の人たちの中には、民衆と同じくらい貧乏だった人も少なくないという。
 身分や職業だけでは、実態がわからない。
 国家公務員の中にも「公僕」であることを意識して、日夜、懸命に国民の生活を向上させることを考えて、汗水たらして働いている人も大勢いることを忘れないでほしい。

23:17:15 | falcon | comments(0) | TrackBacks