July 27, 2008

副都心線で夏目漱石ゆかりの地へ

 『東海道四谷怪談』の舞台が雑司ヶ谷と書いて、ふと思ったら、副都心線は、夏目漱石ゆかりの地を貫いています。
 夏目漱石、夏目金之助が生まれたのは、早稲田・夏目坂のあたりです。東西線・早稲田駅のほうが近いので、副都心線・西早稲田駅に近いというのは無理があります。西早稲田駅から、早稲田大学の戸山キャンパス(文学部)、早稲田キャンパス(大隈講堂など)へはかなり歩きます。でも、同じ早稲田界隈です。
 夏目漱石は幼いころ、塩原家に養子に出されるのですが、その塩原家があったのが、現在の新宿・太宗寺のあたりです。副都心線・新宿三丁目駅から都営新宿線・新宿三丁目駅へ向って、そこから地上へ上がると、(新宿2丁目を突き抜けて)太宗寺へは近いです。現在は新宿1丁目・2丁目ですが、戦前は花園町と言いました。新宿御苑へ近く、またゲイタウンの新宿2丁目へは目と鼻の先です。ノイタミナの『西洋骨董菓子店〜アンティーク〜』の舞台の一つですね。現在の2丁目とは少し離れているそうですが、戦前からカフェなどが並ぶ歓楽街でした。映画館もあったそうです。現在は、ゲイタウンと言っても、外人が集まるパブがあったり、芸能人が出入りするバーがあったりして、以前より隠微な雰囲気はありません。
 えっ?!、やけに詳しいねぇ、ですって、実は戦前の話ですが、父がこの近くで育ったからです。父は、別にカフェやゲイとは関係ありません。それから、友人が近くの予備校へ通っていたので、遊びに行って、通りかかっただけですよ。今では、新宿御苑も東京体育館の帰りに通りかかるので、太宗寺のあたりを散策したことがあるんです。ゲイバーへ行ったわけじゃないですからねぇ〜。
 夏目漱石が晩年住んだ『漱石山房』の家は早稲田にありました。
 そして、雑司ヶ谷は、何といっても、『こころ』で先生が墓参りへ行き、そこで私と出合いますし、漱石先生の墓は雑司ヶ谷の墓地にあります。
 というわけで、副都心線は夏目漱石ゆかりの地を訪ねるのに便利な地下鉄です。

03:35:16 | falcon | comments(1) | TrackBacks

July 25, 2008

うらめしや〜

 暑いですね、今年の夏も。

 御茶ノ水で階段から落ちて怪我しましたが、やっと痛みが和らぎ、癒えてきました。

 さて、かいだんはかいだんでも、中央快速線なら御茶ノ水の一つ先の四谷怪談です。こう、暑い夜には背筋も凍る怪談話に興じてみるのも悪くはありません。そこで今読んでいる本を紹介します。



 とにかく引き込まれます。第四世鶴屋南北の七十代の作品『東海道四谷怪談』の解説と、作品の舞台となった江戸の町の紹介です。実際に歌舞伎の一場面を見ているようにして、解説が進みます。最初は浅草から始まります。零落した武士の一家の悲劇と、地獄宿(売春宿、今でいえば風俗店の一種)の男女の欲望が浅草を舞台に描かれます。
 お岩さんの話は、実は四谷で起こったものです。実家の墓のある寺が於岩稲荷に近いので、よく知っています。四谷といっても、JR信濃町駅が最寄駅で、慶応大学病院に沿って、四谷三丁目方面へ行くと「左門町」という標識が見えます。諏訪左門という人の家があったことから左門町と言い、お岩さんの実父の名前・四谷左門は、この地名に因んでいます。
 ところが、『東海道四谷怪談』の舞台となっているのは、池袋に近い雑司ヶ谷の四家町で、南北は実際の舞台・四谷ではなく、わざと別の四谷を悲劇の舞台に選んでいるのです。今でも、雑司ヶ谷は都心にありながらも、のどかな雰囲気がありますが、江戸時代は辺鄙な人もあまりすまないところだったのでしょう。
 歌舞伎では、実際に起こった事件を取り上げる時には、時も場所もずらして別の設定にします。『仮名手本忠臣蔵』も吉良上野介や浅野内匠頭は登場しません。別の人物に仮託して描くのです。文学では様々な表現上の制約があって、その制約を踏まえて、ギリギリの表現を描くので、作者の思いや考えが凝縮します。権力によって制限された中で「表現の自由」を求めるからこそ、技巧がこらされて、文学性が高まり、見る者、読む者の気持ちを引きつけます。

 さて考えてみると、雑司ヶ谷と言えば、副都心線が開通して行きやすくなりました。よく事故やトラブルが起こるのも、お岩さんの祟りかも?うらめしや〜。
 駅の出口の裏が、食堂だったりして!

 どうです、寒くなったでしょう。お後がよろしいようで。

03:30:01 | falcon | comments(0) | TrackBacks

July 22, 2008

大学の先生もつらいよpart、いくつだったけっ?

 フジテレビで放映中の米倉涼子さん主演のドラマ『モンスター・ペアレント』を毎回、楽しみにしています。
 小学校だけでなく、大学にもモンスター・ペアレントがやってきます。幸い、Falconは出会ったことがないのですが、成績が間違って付けられたのではないかと、保護者の方が北海道から上京してきて、「大学を訴える」と脅された先生がいたそうです。その学生は講義にあまり出席せず、レポートだけで成績が取れると思いこみ、友人のレポートをコピーして貼り付けて提出したので、担当の先生は、その学生と友人の学生の成績を落としたそうです。その保護者の方とも面談して、レポートの不正行為を指摘しても、わが子かわいさの余り、一方的に先生を責めるばかり、最後には大学を訴えるとまで言いだしたそうです。就職(教職)を控えている学生だったので、保護者も必死だったのでしょう。
 それから、最近は講義で質問して、答えられないと先生に恥をかかせられたと思い込む学生が非常に多く、うっかり質問もできません。かと言って、質問もしないで、講義だけを続けていると、「単調でつまらない」「学生とのコミュニケーションを取らない」とか、もっともらしく授業アンケートに書かれてしまいます。
 居眠りに関しては、私は注意をするのではなく、親切に起こしてあげるのに、居眠りをいちいち注意したと怒り出す学生がいます。じゃあ、起こしてあげなければ、どうかといえば、「大事な説明の時に起こしてくれないから、試験ができなくても、当然だ!」と開き直る学生もいます。どこまで親切にしてよいのか悩みます。
 極端なトラブルを起こす学生は本当にわずかなんですが、質問や居眠りをめぐる問題は割と日常的に起きます。
 最近はいちいちビクビクしなくなりましたが、電車や地下鉄で噂話を聞いてしまうこともあり、こりゃあ、怪談話よりも怖いもんです。

11:06:10 | falcon | comments(0) | TrackBacks

July 20, 2008

ランスへ行ったら

 ランスは見どころの多い街です。大聖堂のすぐ横のトゥ宮殿の博物館はじっくり見ると2時間くらいはかかります。美術館も見逃せません。そうそう、図書館・メディアテックめぐりも楽しいですよ。もう一つの世界遺産、サン・レミ聖堂の近くにも、図書館があります。サン・レミの図書館は高層住宅の一角にあります。開館日と開館時間を確認してから行ってください。
 ランスには、画家・藤田嗣治(レオナール・フジタ)の墓があります。最近になって、パリ郊外から移されました。日本画の手法を油彩画に取り入れた画家として、世界的に認められた日本人の画家です。エコール・ド・パリの画家のひとりで、パリの画壇が最も輝いていた時代の画家でしょう。
 藤田嗣治は、第二次世界大戦中に戦争画を書いたことで、戦後になって、批難されて、結局、日本国籍を捨てて、フランスに住み、スイスのチューリッヒで亡くなりました。戦争画と言っても、戦争を賛美した絵ではなく、戦争の悲惨さを訴える絵だったのですが、戦後になって「戦争に協力した」と非難されたのです。藤田自身は、日本に捨てられたという気持ちは拭えなかったようです。
 彼が洗礼を受けたのは、ランスの大聖堂です。

 今では、彼が愛したランスの街に眠っています。
 ランスの駅からフジタが眠る礼拝堂までは徒歩で20分くらいですが、面倒な人はタクシーで行ってもいいでしょう。
 礼拝堂の見学は、予約が必要です。冬期は見学できないことが多いので注意してください。連絡先は礼拝堂の入り口にあります。

19:22:46 | falcon | comments(0) | TrackBacks

July 19, 2008

天使の微笑みに見守られて

 NHK『探検ロマン世界遺産』で、シャンパーニュ地方のランス大聖堂が登場しました。Falconは昨年3月、ランスへ行きました。Falconが訪れた時は大聖堂の前の広場が工事中で、周辺がとても歩きにくかったです。番組の撮影が行われた時は工事が終了した後だったようです。
 さて、番組は大聖堂の歴史と大聖堂を宗教的な象徴と信じる少女の話でしたが、番組の随所にジャン・ファララ・メディアテックが映っていました。黒っぽいガラス張りの建物です。気がつきましたか?最近(2007年1月)改装したばかりのランス市の中央図書館です。図書が中心ですが、図書以外の資料も扱っているのでメディアテックと言います。住民以外に貸出はしてくれませんが、閲覧だけなら観光客でも気軽に利用できます。
 Falconが昨年訪れたとき、メディアテックというから、図書はなく、それ以外の資料だけしかないだろうと高をくくっていました。ところが、入ってびっくり。立派な図書館でした。2階以上の閲覧室からは、大聖堂が見える全面ガラス張りの窓です。もちろん紫外線を防ぐため、外からは黒く見えます。大聖堂を眺めるには、このメディアテックの2階以上の閲覧室が絶好のロケーションです。天使の彫像の微笑みまでは見られませんけど。
 メディアテックの1階は新聞・雑誌のコーナーと児童サービスコーナーですが、児童サービスのコーナーから階段を上がるとマザリン(中2階)に、少し年齢が上のヤングアダルト・コーナーがあります。ヤングアダルトと言っても、いわゆるフィクション、読書材ばかりでなく、学校の授業で教科書以外に使えるノンフィクションがあります。各階は部門ごとに部屋が分かれています。最上階にはマンガのコーナーがあり、日本のコミックが置かれています。もちろん、フランス語訳です。
 大聖堂周辺には、カーネギー図書館があります。ここは市の図書館で古く、アールデコ風の壁画や内装が素敵です。こちらは市の文書館を兼ねる調査研究図書館です。第1次世界大戦で爆撃などで破壊された図書館を再建する資金をカーネギー財団の資金を受けたことから、カーネギー図書館と呼ばれています。ベルギーのルーヴアンとセルビアのベオグラードの図書館もカーネギー財団の資金で再建されたようです。

 この夏、ランスを訪れる方は、町のレストランでシャンパンを楽しむだけでなく、天使の微笑みに見守られながら、本をメディアテックで読んでみては、いかがでしょうか。日本のコミック本のフランス語訳でも十分。贅沢な時間の過ごし方と思いませんか?

 番組をご覧になっていた人は、登場した少女が12歳なのに中学2年生と言っていたので、疑問に思ったことでしょう。フランスは小学校が5年制で、中学校(コレージュ)が4年制、高校(リセ、職業リセ)が3年制なので、少女は日本では中学1年生に相当します。日本でいう職業高校、職業リセはコレージュの3年生から入学できます。なので、職業リセは学校によって4年制、5年制のところもあります。
 フランスの中学校、コレージュの図書館での授業が見られると期待して番組を見ていましたが、残念ながら、それはありませんでした。本当に残念でした。

21:47:42 | falcon | comments(0) | TrackBacks