December 30, 2007

返事はいらない

いろいろあった2007年も残り少なくなりました。
久しぶりに、宮部みゆきさんの作品を読みました。『返事はいらない』(新潮文庫)は短編ミステリー6本です。どれも秀逸で、ちょっとドキッとさせられ、最後はホッと胸をなでおろす、優しく、後味の良い作品ばかり。年始の読み初めに良いですね。初夢も良くなりますよ。
今年のブログ納めに、意味有り気な、ぴったりなタイトルでした。宮部みゆきさんには迷惑だったかな。
良いお年を!



00:46:13 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 23, 2007

後宮

鎌倉時代の宮中の女性が書いた日記文学『とはずがたり』を原作としたコミック、海野つなみ著『後宮』全5巻が完結しました。
後深草院に愛された二条という女性の半生を原作に基づき、丹念に描かれたコミック作品です。
Falconは高校生の頃、瀬戸内晴美さんの『中世炎上』と、『問はずがたり』を読んで、凄い話だ!と思いました。源氏物語に憧れて、院の寵愛を受けながら、何人もの男性と関係を持つ女性の独白が綴られます。当時の作品としては、世界的にも類を見ないでしょう。
かなり過激な描写があり、R指定ですが、日本の古典文学を学ぶ機会になるでしょう。
出家してからの話がかなり面白いのですが、さらりと描かれています。男性に翻弄され、孤独と必死にむきあった女性の姿がコミックでも丁寧に描かれていました。
絵が最初の頃に比べて、繊細で美しくなっています。御室(院の弟、性助法親王)が登場したあたりから、変わりましたね。
モンゴル軍襲来という未曽有の状況という時代背景も凄い!




23:26:32 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 20, 2007

戦火に巻き込まれた図書館:イラク

 今日の明け方、勝手に思いついた小説の概略をブログに書き、その中でイラク国立図書館を登場させた。

 今日 改めて、検索して、イラク国立図書館の惨状を知り、愕然とした。窮乏の状況で、やっとの思いで、開館して、サービスしているらしい。幸い、かなりの資料を運び出して無事だったようだが、焼失などで失った資料も多いらしい。また、アメリカ軍が接収した資料もあり、館長はアメリカに返却を要求している。
 先日、イラク国立図書館・文書館のSaad Eskander館長が「今年の文書館職員(Archivist of the Year 2007)」に選ばれた。
 館長は今年(2007)の7月まで日記としてブログ(British Libraryのサイトで英語版が読める)を書いてきたが、命を落とした同僚たちのことを食い物にしているようなので、これ以上は書き込まないとして更新を止めたらしい。

 架空の話として安易に登場させたことを恥ずかしく思う。多くの人が戦火にまみれて、銃撃に巻き込まれて、亡くなったことを思うと、平和な日本でのうのうと過ごしている自分の力の無さが口惜しい。

 『タラス:紙の戦(いくさ)』を思い切って、削除しようと思った。イラクで厳しい状況に耐えて図書館を運営している職員、利用している人たちのことを思うと、厳粛に受け止めたい。しかし、削除してしまったら、関心を持ってもらう機会がなくなるかもしれない。この記事とともに、読んで頂いて、日本人として関心を持ってもらいたい。イラクが早く平和を取り戻して、多くの人が図書館を利用できることを祈りたい。
 何時完成できるか、判らないが、できれば『タラス:紙の戦(いくさ)』を書きつづけていきたい。遠く離れた人たちのことを思って。


22:49:50 | falcon | comments(0) | TrackBacks

『タラス:紙の戦(いくさ)』

 西暦740年、世界の富の半分を有すると謳われた繁栄の都ダマスカスの町外れを、ソグド人の隊商が駆け抜けた。そのとき、通りかかったアラブ人の少年アブールは、隊商が落としていった荷物の中に、見たこともない1枚の薄い平べったい異国の文字が書かれたものを拾った。それは、遠く離れた中国で作られた紙だった。
 幼くして両親に先立たれたアブールは、叔父夫婦の家に預けられていたが、ソグド人の隊商に連れられて、ダマスカスと世界の富を二分する唐の都・長安へ旅立つ。行く手にはさまざまな試練が待っていた。
 アブールはソグド人から商売の極意を教わりながら、青年へと成長した。そのころ、長安は玄宗皇帝の下、これまでにない繁栄を極め、町には異国の物資があふれて、華やいだ文化を誇っていた。
 アブールは、隊商が落とした紙を握り締め、中国人の紙漉きの職人の家に出入するようになる。そこで、西域からつれてこられた美しい少女と出会う。
 玄宗皇帝は息子の后だった楊貴妃を見初めて、毎日、閨房にこもり過ごす日々が続く。楊貴妃の兄・楊国忠と安禄山との葛藤。
 西暦750年、西域にアラブ人が侵攻したという知らせが伝わると、唐では高仙芝率いる遠征軍が結成された。そのとき、アブールは中国人の紙漉きの職人たちと遠征軍に加わる。西域の美しい少女との別離。
 そして、西暦751年、西域のタラス河で唐の軍隊とアラブの軍隊が決戦の日を迎える。唐の軍隊は必死に応戦するが、アラブの騎馬軍には到底かなわない。結果は火を見るよりも明らかだった。唐の敗北に終わった。
 アブールは中国の紙漉きの職人たちとともにアラブ軍に捕らわれて、サマルカンドに向かう。そこで、ボロ布を回収して、中国人たちと紙をつくり始める。
 アブールの死後、彼が書き残した手記は、バクダットに伝わり、王宮の書庫に収められた。そこはカリフ・マムーンの時代に作られた「知恵の館」だった。
 それから、およそ1200年あまりの月日が過ぎた。
 2003年4月、イラクの首都バクダッドは連日アメリカ軍による攻撃が続いていた。バクダッドのイラク国立図書館の地下の収蔵庫に、アブールが書き残した手記があることを知った日本の大学図書館職員・長澤由紀は、大学院でアラブ哲学を研究する友人の秋本祐(タスク)とともに、激戦地のイラクに旅立つ。隣国パキスタン経由でイラクに入ると、そこには銃撃を受けて廃墟になったなったイラク国立図書館があった。由紀たちは、アメリカ軍・イギリス軍に、アブールの手記が奪われないように、密かに収蔵庫に潜り込む。ちょうどその頃、アメリカ人ジャーナリストのマークも、アブールの手記を手に入れようと必死に探していた。

 紙が中国から西方へ伝わった秘められた謎、それが記されたアブールの手記をめぐる日本人の図書館職員とアメリカ人のジャーナリストとの争奪、時空を越えた壮大な歴史ロマン。玄宗皇帝と楊貴妃、詩人の杜甫と李白、安禄山たち、繁栄を極める二つの都バクダットと長安、激戦地のイラクとバブル崩壊後の日本を舞台に繰り広げられる虚々実々の物語。

 こんな話だったら、直ぐにも読みたいなあ。
 Falconが勝手に考えた話です。
 

05:35:31 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 19, 2007

著作権は財産権、著作者人格権は社会的な立場を保護する

 インターネットはやはり「良識の府」と思います。
 正論であれば、必ず、地球上のどこかに同様の意見を持つ人がいます。

 万来堂日記2でも、著作権に関して、Falconと同様の意見を述べていたので、大賛成しました。
 著作権は、著作者と著作権者の財産権を保護するものであり、著作物を売ったときの著作権料を受け取る権利なので、けして著作者に敬意を払うためのものではありません。著作者に支払われる著作権料で、次の新たな創作活動を保証する権利です。
 ならば、著作者人格権は、日本の著作権法では、公表権、氏名表示権、同一性保持権であって、著作者の社会的な名声、立場、名誉、そこから生じる利益を保護するものです。著作物に表現された人格によって、著作者を尊敬するためものではありません。
 「リスペクト」という英語の表現から、「敬意」という語を導き、著作権を論じている図書館学関係の教科書がありますが、読者に著しい誤解を与えています。それだけでなく、その教科書は、著作権法が頻繁に改正されているにもかかわらず、その改正も反映せず、その他の条文の解釈も誤っています。執筆者の方を非難するつもりはないですが、法律に関しては、出版社は専門家に依頼して、正確な記述を書かせるべきです。フィクションではありませんから、間違った記述があれば、「フィクションだからいいんじゃない」で済まされません。架空の問題ではないのです。あるテキストに関しては、出版社に申し入れて、訂正をお願いしてあります。
[more...]

11:18:38 | falcon | comments(0) | TrackBacks